昭和の時代、豆腐屋の前を通ると、「おから持っていき!」「豆乳飲んでいき!」と店の人から声をかけられた経験はありませんか?
コロナが拍車をかけたこともありますが、人と人とのコミュニケーションが希薄になりつつある昨今に少し寂しさを感じている人もいるのではないでしょうか? そんな中、あえて“昭和の古き良き関わり合い”を大事にする店がJR三ノ宮駅の高架沿いに登場しました。豆腐店『奴 YACCO』(神戸市中央区)です。
10月にオープンしたばかりの同店。「0歳から100歳まで美味しく食べられるお豆富」「食事に笑顔を届けるお豆富」をコンセプトに掲げています。看板には“感じのよい店”と書かれおり、昔ながらの心温まるコミュニケーションに触れられる豆腐店を目指しているのだそう。詳しい話を、店主の神原さんに聞きました。
昔ながらの豆腐屋かと思いきや、豆腐も店もかなりおしゃれなルックス。店内はコンクリート打ちっぱなしのモダンな雰囲気。ブルーの照明が作業場を照らします。
イラストレーターにデザイン発注したという商品パッケージは我々の知るものとはかけ離れ、クールでポップ。
「冷蔵庫に入れても華やかに、存在感のある海外っぽいパッケージにしたかったんです」(神原さん)
豆腐の種類も多彩。「青大豆豆富」「柚子豆富」「ハーブ豆富」「湯葉豆富」「とうもろこし豆富」「山芋豆富」「あおさ豆富」など、なかなか見ることのない数々のラインナップに驚かされます。
豆腐店を開いたきっかけを聞くと、
「元々飲食店を経営していたのですが、コロナ禍で何もできなくなってしまって……。このままじっとしているのではなく、もっと役に立つことをしたいと考えた時に、豆腐屋をはじめようと考えたんです」(神原さん)
では、“昔ながらの人と人のコミュニケーションを大切にする豆腐店”とはどういった意図があるのでしょうか?
「いま、豆腐業界自体が縮小の一途をたどっており、30年前に比べると何万店舗も消えているんです。令和の子どもたちへ、昭和の豆腐屋のおっちゃん・おばちゃんのほんわかした“空気感”を残したいなと。『感じの良いお店』と看板に書いているのは、昔の感じの良いおっちゃん・おばちゃんを私自身が目指していると言うことなんです」(神原さん)