7月24日から全国32公演のライブツアー「まだまだ一生懸命」を開催中の沢田研二さん。来年(2023年)6月25日、自身の75歳の誕生日に開催するファイナル公演会場はなんと、2018年の“ドタキャン騒動”があった因縁の地、さいたまスーパーアリーナです。さて、今回はそんな沢田さんがライブで披露しているヒット曲の数々について、シンガーソングライター・音楽評論家の中将タカノリと、シンガーソングライター・TikTokerの橋本菜津美が紹介します。
【中将タカノリ(以下「中将」)】 11月19日に沢田研二さんのロームシアター京都公演に行ってきました。沢田さんは昨年までの4年間、ギターの柴山和彦さんと二人だけのライブを続けていたんですが、今年からはフルバンド編成のバックバンドが復活。そこへの期待もあってか、どの会場も超満員になっているようです。京都も大盛況でした。
【橋本菜津美(以下「橋本」)】 小編成の良さもありますが、やっぱり音楽としてはフルバンドの魅力が大きいですよね。
【中将】 沢田さんも久々のフルバンドでご機嫌なのか、セットリストの組み方に変化が見られました。沢田さんのライブは新曲や近年の曲が中心で、過去のヒット曲は小出しにしかやらないことで有名なんです。でも今回のツアーはヒット曲が目白押し。特に6曲目の「勝手にしやがれ」(1977)からの流れはすさまじいものがありました。そこで今回は、今年のツアーで沢田さんが披露しているヒット曲にスポットライトを当てたいと思います。
【橋本】 沢田研二さんと言えば「勝手にしやがれ」ですよね。カッコいい曲です。
【中将】 菜津美ちゃんの世代(※29歳)でも知ってる人が多いでしょうね。リアルタイムで沢田さんを見てきた世代なら10曲でも20曲でも知っていると思いますが、最近、YouTubeなどで興味を持った若い人だと、知っていて数曲。そういう層が来たときのためにも、こういう代表的ヒット曲をライブでやってもらえるのはありがたいですね。
【橋本】 ご本人は歌い飽きて「またか」と思っちゃうかもしれないけど、ファンにとってはうれしいですよね。特に初めてライブに行く人だと、知らない曲ばっかりだったら少し寂しいかもしれません。
【中将】 沢田さんはMCでしょっちゅう「お客はお年寄りばかり」みたいなことを言うんだけど、実際は若い人も来てるんですよ(笑)。なので、今回のセットリストはとても良かったと思います。「勝手にしやがれ」の次はこれも大ヒット曲「時の過ぎゆくままに」(1975)でした。
【橋本】 この曲も大好きです。私ならライブで「勝手にしやがれ」「時の過ぎゆくままに」を続けて聴けたら大当たりだと思っちゃいます。
【中将】 この2曲は作詞が阿久悠さん、作曲が大野克夫さんですね。沢田さんの曲の制作陣って年代によって少しずつ変わっているんですが、阿久さん、大野さんが主に曲を手がけたのは1970年代後半。沢田さんが20代後半から30歳くらいの頃です。ダンディーで陰影のあるスターという現在の“ジュリー”イメージの構築にはこのお二人の存在が欠かせなかったと思います。
【橋本】 私にとっても沢田さんのイメージってそれですね。
【中将】 でも、それ以前からファンだった層にとってはジュリーは色っぽい美少年みたいなアイドル的存在だったわけです。