阪神・淡路大震災から28年を迎え、兵庫県警察学校(兵庫県芦屋市)で、初任科の学生約200人を対象に災害現場で救助活動に当たったベテラン警察官による講義があった。
兵庫県警では、阪神・淡路大震災当時、若手として現場の第一線で活動した警察官らが、2008年以降、「震災語り部」となり、後輩警察官の指導(伝承教養)に当たっている。このうち警察学校で初任科生を中心に行われた講義は48回に及び、のべ3750人が受講した。回数、受講者数ともに、全国的にみても多い部類に入る。
■「災害現場は理不尽なもの」いかに現場と向き合うか
県警本部・災害対策課の技能指導官・三戸恵一朗警部補(46)は、2018(平成30)年の広島・2020(令和2)年の熊本・2021(令和3)年の熱海という、すべての「7月豪雨」の際に現地に足を踏み入れた。「それぞれ土質が違う」のを実感したという。2005(平成17)年のJR福知山線脱線事故や、東日本大震災などの現場にも派遣され、経験豊富だが、こうした土砂災害現場の特異性を感じた。土の怖さ、水の怖さを思い知らされた。土石流の恐ろしさを知る1人だ。
それだけに、「われわれ1人1人、1つ1つの行動が、救助を必要とする方々の命に関わってくる。レスキューにマニュアルはない」と信条を語る。
2021年、兵庫県警で初の災害警備の技能指導官となった三戸さんが、講義当日に着用したのは広域緊急援助隊の制服。援助隊は阪神・淡路大震災がきっかけとなり、全国の警察で結成された。阪神・淡路大震災発生時、三戸さんは高校3年生。まだ警察官ではなかった。
新型コロナウイルス感染拡大防止のため、兵庫県警では災害対応訓練の回数が大幅に減少した。阪神・淡路大震災後に採用された警察官の比率が8割を占める今、ノウハウの伝承が急務となっている。
「警察学校の授業で集団で走るのは、単に体力をつけるだけではない。走って転進(現場での方向変換など)する時、一丸となって遊撃できないと意味をなさない」。阪神・淡路大震災では、警察の災害用資機材不足が課題となった。近畿地方では地震をはじめ、大災害に遭遇していなかったことも