写真家・前畑温子さん 神戸・湊川隧道など『産業遺産』の魅力発信 「“生きた教科書”の歴史残したい」 | ラジトピ ラジオ関西トピックス

写真家・前畑温子さん 神戸・湊川隧道など『産業遺産』の魅力発信 「“生きた教科書”の歴史残したい」

LINEで送る

この記事の写真を見る(6枚)

 駅舎やダム、鉱山など、日本の近代化や経済発展に貢献し、後世に伝えるべき価値があるとされる”産業遺産”。老朽化による取り壊しが進む産業遺産がある一方、その魅力発見や保存活動に力を入れる人がいます。その一人が、産業遺産探検家であり写真家の前畑温子(まえはたあつこ)さんです。兵庫県神戸市を拠点に活動する彼女は、これまでに全国800か所以上の産業遺産をまわっています。

写真家兼産業遺産探検家 前畑温子さん
写真家兼産業遺産探検家 前畑温子さん

 前畑さんは、1984年神戸市で生まれました。「最初は全く興味がなかった」と話す彼女が写真の世界に足を踏み入れたのは、2007年頃。雑貨屋さんで偶然手にしたトイカメラをきっかけに、知人の勧めで一眼レフカメラを購入。そんなとき、たまたま書店で見かけた廃墟の写真集に心を奪われたそう。次第に、自身のカメラで廃墟や産業遺産を撮影するようになります。前畑さんは、「何度足を運んでも、毎回違う発見があるところがおもしろい」と魅力を語ります。

 当時は保育士の仕事をしながら、産業遺産の撮影をしていた前畑さん。長崎県の軍艦島を訪れた際、元島民からかけられた「今はボロボロになったこの島の姿が、日本の未来かもしれない」という言葉に衝撃を受けたそう。炭鉱とは、エネルギーの主役が石炭から石油になり、次第に使用されなくなった場所。いわば、使い捨てられ、放置された場所です。産業遺産は「生きた教科書」と話す前畑さんは、先人の知恵やその歴史を写真で残したいと考えました。

産業遺産の明延鉱山(兵庫県養父市)の坑道内でカメラを構える前畑さん
産業遺産の明延鉱山(兵庫県養父市)の坑道内でカメラを構える前畑さん

 そこで、10年間続けた保育士の仕事を辞め、写真家としての活動を本格的に始めます。産業遺産のツアーやイベントなどを行う「NPO法人J-heritage(ジェイヘリテージ)」の設立にも携わりました。現在は、夫婦で産業遺産の保存や活用に尽力しています。

"廃墟の女王"こと「摩耶観光ホテル」(神戸市灘区)(撮影:前畑温子さん)
"廃墟の女王"こと「摩耶観光ホテル」(神戸市灘区)(撮影:前畑温子さん)

 なかでも力をいれているのが、神戸市兵庫区の「湊川隧道(みなとがわずいどう)」に関する活動です。湊川隧道とは、明治時代につくられた日本初の河川トンネル。全長600メートル、幅7.3メートル、高さ7.7メートルの巨大な地下空間です。

 兵庫区で生まれ育った前畑さんですが、初めて足を運んだのは2011年。「湊川隧道に使用されているレンガの数は約450万個で、ひとつひとつ手作業で積み重ねている。まさに、明治の職人たちの技がそのまま保たれている場所」と表現します。

「湊川隧道」 近代土木技術を用いた日本最初の河川トンネル(撮影:前畑温子さん)
「湊川隧道」 近代土木技術を用いた日本最初の河川トンネル(撮影:前畑温子さん)
LINEで送る

関連記事