絶滅したと考えられていた菌寄生植物の花「コウベタヌキノショクダイ」が、30年ぶりに発見され、その実物標本が、三田市にある兵庫県立人と自然の博物館で展示されている。2023年4月9日(日)まで。
この植物は、1992年神戸市内で「謎の花」として1個体が発見されたものの、最初で最後の目撃例となり、その場所も開発されたため、「絶滅した」とされていた。神戸大学理学部の末次健司教授らの研究グループは、県立人と自然の博物館に保管されていた標本から新種であることをつきとめ、2018年に「コウベタヌキノショクダイ」と命名し発表した。
そして2021年、末次教授らの研究グループは、別の調査で訪れた三田市内で「コウベタヌキノショクダイ」を発見し、これが30年ぶりの大発見につながった。
タヌキノショクダイの仲間は、光合成をやめた植物の一群で、キノコと見紛うばかりの奇妙な花をつける特殊な植物。海外では「fairy lantern=妖精のランプ」と呼ばれ、研究グループによるとコウベタヌキノショクダイの生きた姿は、まさに暗い林床を照らす「妖精のランプ」のようだったという。
とはいえ、簡単に見つかるようなものではない。高さは1センチほど。花を上から見ると5ミリほどの大きさで、茎は1ミリほどとほとんどないに等しく、ほぼ埋もれていることも。まさに「根に花がくっついている感じ」と県立人と自然の博物館の李忠建研究員は言う。
今回も「たまたま掘ったところにあった」。これまでは1つの標本しかなく、果たしてその花が大きいのか小さいのかなどはわからなかった。複数の株が見つかったことで、その個体差がわかるようになったという。
日本にもタヌキノショクダイの仲間はいるが、李研究員は「今回の再発見でDNA解析や内部構造の違いから、近いものだけど別種ということが特定された。日本でこのグループは思った以上に多様であることが裏付けられた」と話し「今後さらに見つかるかもしれないという期待もある」とした。