神戸の丘の上に立つ古民家レストランが、地元を中心に話題を呼んでいます。“古民家”と言っても和洋折衷の建物で、提供される料理も、神戸で長年醸成され続けている食の文化と密接な関係があるといいます。店主に詳しい話を聞きました。
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今年1月、神戸市兵庫区の高台、会下山(えげやま)にオープンした「la mura(ラ・ムーラ)神戸会下山」(以下 ラ・ムーラ)。運営を行うのは、兵庫県をはじめとする全国各地の日本酒や焼酎、日本ワインなどをそろえる神戸の老舗酒屋「酒の美味小家(うまごや) てらむら」(同兵庫区)で、日本酒とのマリアージュを楽しめるよう工夫を施した創作フレンチが提供されています。
古民家は、1939(昭和14)年に建てられた築84年の建物。国の登録有形文化財に指定されています。もとは、兵庫の津で小麦澱粉の卸問屋として財を成した石阪慶一郎の邸宅 で、和と洋が自然に調和した“数寄屋風西洋家屋”と呼ばれる、神戸ならではの設計です。
かつては、石阪慶一郎の弟である神戸の詩人・竹中郁や洋画家の小磯良平など、神戸を代表とする文化人達のサロンにもなっていたといい、店のオープンに合わせてリノベーションを経た現在も、モダンな雰囲気と歴史を感じさせる趣が残ります。
同店代表の寺村仁均(まさなお)さんによると、寺村さんが「お酒に合う料理を提案したい」と考えていた頃、家族がその場所としてぴったりな古民家を犬の散歩中にたまたま見かけ、この場所でレストランを開業することにしたのだそう。昭和初期の神戸の風情を残す洋家具と、季節折々の表情を見せる庭園が織りなす、ゆったりとしたひとときを過ごせる空間自体も自慢の一つだと、寺村さんは話します。
提供するメニューは“日本酒に合う発酵料理”にこだわり、前菜からデザートまで、ほぼ全ての料理に発酵食品が使用されています。ランチ、ディナーともコース料理のみ。日本酒を主役と捉えた、“お酒に寄り添う料理”を目指しているといいます。
材料にも日本酒やワインが使用されており、赤ワインと醤油糀(こうじ)で鶏肉を煮込んだ「淡路鶏のコック・オ・ヴァン」や、発酵させたあんこを添えたティラミスと甘酒アイスなど、和と洋が融合した料理は同店ならでは。
山手の文化財を生かした店として、寺村さんは「坂道ですが、こんなところにこんな“隠れ家”が! とワクワクしてもらえたらうれしいです」と語りました。
(取材・文=村川千晶)
【取材協力】
■la mura 神戸会下山
所在地:〒652-0043 神戸市兵庫区会下山町1丁目2-15
営業時間:11:30-14:00(L.O 13:30)、18:00-21:00(L.O 20:00)※ 予約制 前日までに要予約
定休日:火・水曜日定休日
価格:ランチ3500円、ディナー6000円(いずれも税込)
電話番号:078-381-8596
公式サイト
※ 駐車場なし。近隣にパーキングあり。
※ 完全禁煙
※2023年9月時点の情報です。