長年地域に愛されてきた銭湯の数が、いま大きく減少している。
設備の老朽化や後継者不足など多くの課題を抱える中で「銭湯を日本から消さない」をモットーに、銭湯の再生を手掛けているのが京都市にある『株式会社ゆとなみ社』だ。同社社員で店長のユウさんに話を聞いた。
「神戸の台所」として知られる東山商店街から一歩路地を入ったところに銭湯「湊河湯」はある。1949年(昭和24年)、現オーナーの元木英雄さんの祖父が開業し、その後は父・元木淳さん、母・美智子さん夫妻が営んできた。しかし、今年1月に淳さんが他界。存続の危機にあったところにゆとなみ社が継業を願い出た。
同銭湯の常連客でもあったユウさん。「大学生時代に東山商店街と『湊河湯』の存在を知り、足しげく通っていました。初めて湯に浸かった時の気持ちよさは、いつまでも忘れられません」。一度は東京で働いたものの、地元に戻りゆとなみ社に入社。「湊河湯」のリニューアルを店長として任せられることになった。
手入れが行き届いていた浴場にはほとんど手を加えず、番台を撤去して受付とロビーに改装。これは「若い人たちも気兼ねなく銭湯に来られるように」という同社の強いこだわりだ。
さらに“風呂上がりの一杯”を楽しんでもらおうと、ロビー脇に立ち飲みカウンターを設置。東山商店街の店から取り寄せた地ビールやつまみを手頃な価格で販売している。
ユウさんは「営業時間は13時から23時まで。商店街は比較的早い時間に閉店する店も多いので、夜遅くでもお酒が楽しめる場所にしたかった」と話す。