すべての人が生まれながらにして持っている、社会で自分らしく幸福に生きていく権利「人権」。現代社会では、いじめ、虐待、差別といった、人権に関わる課題がさまざまあります。特に最近では、インターネット上の誹謗中傷やデートDVなど若い世代に関わる問題も多くなっていることから、若年層への啓発活動も積極的に行われています。
10日には兵庫県太子町内の高校で、人権擁護委員による講座「人権教室」が開かれ、高校生たちが身近な事例を通して人権問題について考えました。
参加したのは、兵庫県立太子高等学校の1年生187人です。テーマは「男女の対等な関係を築くために~デートDV・SNSトラブル」。講師は、人権擁護委員の一人で、兵庫県人権擁護委員連合会・兵庫男女共同参画委員会委員長でもある中村薫さんが務めました。中村さんは、学生にも身近に起こり得る人権侵害の事例を挙げ、若いうちから人権意識を高め、人権問題を自らの課題として捉えて行動する大切さを伝えました。
事例の一つ「デートDV」とは、恋人間で起こるDV(ドメスティックバイオレンス)を指します。身体への直接的な加害だけでなく、行動の制限や強要、精神的苦痛を与える言葉の暴力なども含みます。たとえば、「明日は部活動があるから一緒に過ごせない」という恋人に「自分と過ごすのが優先だ」と主張し、相手の意思に反して部活動を休ませる行為はデートDVにあたります。
このような、主に10代~20代に起こり得る具体的なケースを紹介したところ、生徒からは「自分が被害者はもちろん、加害者にもなる可能性があると思いました」という感想が聞かれたとのことです。
教室を終えた中村さんは、「熱心に話を聞いてもらえました。将来自分の身を守るためにも、皆さんに人権問題を“自分事”として考えてほしい。そして、自分より上の世代にも自分の意見をしっかり言えるような若者を育てていきたいと思っています」と話しました。
また、このような人権問題に直面した際、すぐそばに相談できる人がいることも知ってほしかったと言います。人権擁護委員は全国の市区町村に配置され、現在約1万4000人が活動しています。兵庫県内では神戸地方法務局で相談を受け付けており、県内に12か所の常設相談所があります。中村さんは、「法務局はハードルの高い場所ではありません。“地域のおじさん”に話してみよう、と気軽に相談所を利用していただけるように、今後も人権教室を開催していきたいと考えています」と語りました。
※ラジオ関西『NEWS TIMELINE(ニュース・タイムライン)』2023年11月14日放送回より