鍋の具材やクリスマスチキンなど、冬は鶏肉を食べる機会が増えるのではないでしょうか。さて、この鶏肉、関西地方では「かしわ」と呼ばれることも。阪急うめだ本店(大阪市)の鶏専門店「鳥芳」の執行役員・木下裕二さんに理由を聞きました。
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木下さんによると、鶏肉を「かしわ」と呼ぶようになった起源には諸説があるそう。そのうちの一つは、中国から渡来した鶏の羽毛が黄褐色だったことに由来するというもの。その鶏は「黄鶏」と書いて「かしわ」と呼ばれており、西日本で多く飼育されていたことから、主に関西地方で「かしわ」と言う呼び方が広まったと考えられているとのことです。また、関西地方以外の場所でも、九州の郷土料理「かしわめし」や香川県の「かしわ天」などに見られるように「かしわ」という呼び方は日本各地で広まっているそうです。
隠語として鶏肉を「かしわ」と呼ぶようになったという説もあります。1685年、江戸幕府第5代将軍徳川綱吉により発せられた“生類憐れみの令”により、動物を殺して食べることが禁止されました。そこで、馬肉は「さくら」、猪肉は「ぼたん」、鹿肉は「もみじ」、鶏肉は当時の鶏の羽が茶褐色で柏の葉っぱの色に似ていたことから「かしわ」と呼ばれるようになったとのこと。江戸時代から鶏肉は「かしわ」と呼ばれるようになり、現在、一部地域でもその文化が残っているようです。
木下さんいわく、年末は大晦日など家族が集まって鍋を食す機会が増え、鶏肉の需要が特に高くなるとのこと。そのため年末の売上は通常日の約7倍になるそうです。鶏肉専門店ならではの「おいしく食べるポイント」についても教えてもらいました。
鶏肉を調理する際、基本的には火の通り方に合わせて切り方を変えることが大事だそう。水炊き・筑前煮など、火が通るまで時間がかかるものは一口大の“角切り”にし、すき焼きなどの火が通りやすい料理の場合は“そぎ切り”にすることがおすすめとのこと。鶏肉に火が通りすぎることで身が硬くなってしまうことを防ぐために、料理に合わせた切り方を推奨しているそうです。また鶏肉の繊維を断ち切るように包丁を入れることで、筋が残りにくくなります。
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江戸時代に広まったとされる「かしわ」という呼び方ですが、隠語として使われるなど当時から日本人に親しまれてきたことがうかがえます。年末は鶏肉の歴史を感じながら、お鍋を楽しんでみるのもいいかもしれませんね。
(取材・文=迫田ヒロミ)