昨年の新語・流行語大賞で「地球沸騰化」という言葉がトップ10入りしたことをご存じだろうか? このことは地球に刻一刻と忍び寄る危機について、我々が認識しなおす必要性を示しているのかもしれない。こうした環境問題を解決に導く手段として、国連環境計画の一つ「廃棄物管理に関する知識の構築」がある。その中でも「資源循環型社会」の形成がポイントで、分かりやすい例だと“リサイクル”と“アップサイクル”が挙げられる。具体的なものとしては「廃食用油のリサイクル」。近年目を見張るほど進歩しており、その価値は計り知れないと話題を集めているのだとか。
廃食用油の回収・リサイクル事業を展開する『浜田化学株式会社』(兵庫県尼崎市)代表取締役の岡野嘉市さんに、“経営視点での業界の未来”について聞いた。
「環境ビジネスは急激に加速しています。海外のカンファレンスに参加している中で海外企業側がマストにしている事が増えている中で、日本側の取り組みは進歩を見せています。ですがそれをビジネスにしていく仕組み化はまだまだ遅れていると感じます」と岡野さん。
「Think Globally、 Act Locally(地球規模で考え、足元から行動せよ)」という言葉があるが、その言葉を用いて岡野さんは「世界規模にせよ日本国内規模にせよ、実際各現場に様々な事象があり、それをしっかりと紡いでいく事こそが世界の、ひいては地球のためになるのです。大きな枠組みで考えつつ、小さい事からコツコツと……というスタンスが本当に大事。『Act Locally』は個人に負担がかかるケースもあり、継続が厳しい事も。全体でどのような仕組み(デザイン)を作るのかがポイントであり、両方あって初めて成り立つのです」と話した。
今後のビジョンについて岡野さんは、「当社は今まで油のリサイクルを中心にしてきました。ですが、この先は“モノ”をリサイクルするだけでなく、『使い尽くす』という方向にも目を向けたい。結果として、何が削減できたのかを“見える化”することも可能ではないかと。そろそろ『使い捨て』という価値観に終止符を打ち、資源が世の中に潤沢に行き届き巡る社会を作ることができれば」と語った。
社会に新たな変革をもたらすためには、企業だけでなく個人の意識変化も必要だ。そこで同社は2025年に開催する大阪・関西万博で大阪外食産業協会(ORA)のパビリオン『宴~UTAGE~』でも発信する構想を練っているという。
「大阪は、食文化の発信・食い倒れの街。その賑やかさとか多様性みたいなものを訴えるとともに、子供たちに向けて未来の食がどうあるのか知って欲しい。世界を見回すと、“物を食べることが出来ない”という環境が存在します。それに対して何ができるのか……という提案も含め、社会性のある動きを食品産業全体で働きかけていきたい。加えて、地球環境や生態系についての見せ方も行う予定です」(岡野さん)
また、廃食油リサイクル事業での課題を聞いたところ「たとえば、食品の無駄になってるものからエネルギーや栄養素・油を採取することができます。まずはこの開発を進めていき、リサイクルをして“世界を汚さない”ようにしたい。バイオ燃料や船舶燃料(SVO)などに変えていく技術の発展はもちろん、航空燃料(SAF)については兵庫県内の複数企業とグループを作り連携していきます」と話した。