日本人熱愛「ドリア」←実は洋食じゃない説 誰が発明? 意外にも複雑な誕生背景を専門家が解説 | ラジトピ ラジオ関西トピックス

日本人熱愛「ドリア」←実は洋食じゃない説 誰が発明? 意外にも複雑な誕生背景を専門家が解説

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「天津飯」や「冷やし中華」が中国生まれの料理と思いきや実は日本でアレンジされ誕生した料理であるように、日本生まれの「外国風料理」は他にも存在します。20年以上のレストラン勤務を経て、ウェブサイト『日本の西洋料理』を運営する青二才さんに話を聞きました。

日本で人気の洋食「ドリア」について調査した(イメージ)

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 ケチャップライスやバターライスの上にソースとチーズをたっぷりとかけ、オーブンで焼き上げた料理といえば「ドリア」。老若男女に愛される洋食のひとつですが、じつは“日本生まれ”なのです。某イタリアンファミリーレストランでは看板メニューにもなっているだけに、ヨーロッパ圏発祥の料理だと思い込んでしまいそう……。

 青二才さんによると、ドリアの起源は1927年に開業した老舗ホテル「横浜ホテルニューグランド」にあるのだとか。同ホテルで開業時から総料理長をつとめていたサリー・ワイル氏こそが生みの親と言います。

「ワイル氏は総料理長として、メニューに記載されていないものでもお客さんのリクエストに応えて料理を作っていたそうです。ある日、お客さんから『体調が良くないので、何かのど越しの良いものが食べたい』というリクエストが入りました。そこで、バターライスに海老のクリーム煮を乗せ、『ソース・モルネ』をかけてチーズをふり、オーブンで焼いた料理を作ったところ評判に。いつしかホテルの名物料理にもなり、現在のドリアとなったという話が残っています」(青二才さん)

 ワイル氏はパリから来日したスイス人コック。フランス料理をメインに手掛けていましたが、故郷のスイス料理はもちろんイタリア料理など西欧料理全般が得意だったそう。「彼が持つさまざまな料理の技術や知識によって作られたドリアは、日本生まれの洋食というより『ワイル氏の料理』と表現する方が正しいかもしれません」と青二才さん。

 料理名の由来はというと、青二才さんいわく「イタリアの港町・ジェノバの名門貴族『ドーリア家』から名付けられています。11世紀から18世紀末頃まで存在したジェノバ共和国(現在はイタリアの1都市)のなかでも、ドーリア家は建国以前から名家として知られる超名門貴族でした。そんなドーリア家きっての有名人で、ジェノバの海軍提督として活躍したアンドレア・ドーリア氏こそがドリアという料理名の由来とされています」とのこと。

イタリアのジェノバ ここの超名門貴族の名が「ドリア」の名の由来(写真はイメージ)

 ジェノバは18世紀末の10年間ほどフランス領でした。ドーリア家との関わりもあり両国の間には深い関係性が存在。そうした背景もあり、フランスにもなんとドリアが存在します。どんな料理か青二才さんに聞くと、「フランスにおけるドリアとは、パリのレストラン『カフェ・アングレ』がドーリア家のために作ったキュウリ・トマト・卵を用いた料理のことを指します。フランス料理では、春野菜を使うと"プランタニエ風"、カレー粉を使えば"スタンリー風"というように使う食材で名前をつける慣例があります。そして"ドリア風"といえばキュウリを使った料理のことを指しますが、パリのレストラン『カフェ・アングレ』がドーリア家のために作った、キュウリ・トマト・卵を用いた料理が"ドリア"と呼ばれていた、という説もあります」と説明。日本もフランスもドーリア家が料理名の由来となっているにもかかわらず、料理としては全く異なったものなのです。

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 フレンチ職人のワイル氏によって日本で創作され、料理名はイタリアの貴族が由来……なんとも不思議な誕生背景を持つドリア。フランスやイタリアでの知名度・反応が気になるところですね。

(取材・文=つちだ四郎)

誕生日について不思議な経緯を持つドリア

◆日本の西洋料理
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