神戸や阪神間の街を歩くと、素敵な街並みや美しい景色が広がり、「ああ、この街がふるさとで良かったと思う。しかし、この美しい景色の背後に、かつて壊滅的な地震の被害があった、という事実に気づいた時の衝撃は大きかった」と話すのは、兵庫県西宮市に住む甲南大学1年・榎本日菜さん(19・2005年生まれ)。
しかし、「子どもの頃、両親や先生から阪神・淡路大震災の話を聞くことはあっても、“1.17”がどれほどの衝撃と悲しみをもたらしたのか、実感することは難しかった」と言う。
10代になり、震災についてのドキュメンタリーを目にしたり、震災経験者のリアルな話を聞いたりするたび、今の街の輝きがどれほど多くの人々の支えと努力によって築かれたものか、少しずつ理解できるようになった。
子どものころ、父親から聞いた話が忘れられない。
命の危険を感じながら、今にも倒れそうな建物の中に入り、閉じ込められていた人を助けたこと。
食料がなく、コンビニエンスストアに1つだけあったポテトチップスを分けあって食べた光景…。
父親の表情や声のトーンから、ただの記憶ではなく、今も深く心に刻まれていることが伝わってきた。