兵庫県姫路市のご当地グルメである「姫路おでん」。生姜醤油をつけて、またはかけて食べるのが特徴ですが、この姫路の郷土料理をアレンジし、「姫路うでん」として提供し始めた店があります。「うでん」とはいったい何なのでしょうか? 姫路から全国へ、ご当地グルメの魅力発信への挑戦を掲げる店長兼マネージャーの籠谷天馬さんに詳しく取材しました。
昨年12月に姫路駅南にオープンした店「姫路うでん」(姫路市南畝町1丁目)。籠谷さんは、1854年創業の姫路の老舗つくだ煮製造販売店「籠長本店」の次男です。高校生の頃から、家業を継ぐのではなく自分の飲食店を持つという明確な夢を抱いていたと話す籠谷さん。高校卒業後は調理専門学校へ進学、卒業後は一度他の飲食店に就職しましたが、その後すぐに自身の目標に向けて方向転換し、夢を実現する準備を始めたといいます。
「姫路うでん」開店準備期間は、籠長本店でも働いていたのだそう。その最中も常に新しいことにチャレンジし、様々な具材を使用して自分好みのオリジナル醤油を作ることのできる商品「正々堂々」を開発。現在23歳の籠谷さんは「20代の今、できるだけたくさんのことに挑戦していきたい」と想いを語ります。
そして、念願叶って自身の店をオープン。提供している「うでん」は、特大の油揚げの中に「うどん」と「おでん」の入った新たな形の料理です。うどんの「う」とおでんの「でん」を合わせて「うでん」と命名しました。
どのようにして思いついたのか尋ねてみると、「家庭でおでんを食べると、少し残りますよね。我が家ではその2日目のおでんに、うどんを入れて食べるのが定番だったんです。それを『うでん』と呼んでいました」とのこと。家族の思い出とともにあるその「うでん」を、食べに来た人が楽しいと思うようなインパクトある見た目にしたいと、巨大な油揚げに包んで提供しているのだそうです。「味にはもちろんこだわっていますが、“美味しい”だけでなく、“楽しい”と感じた思い出も残る場所にしたい」と籠谷さんは願いを込めます。
店では地域の食材を使用し、その魅力も発信しています。例えば、姫路うでんが包まれている巨大な油揚げは、神戸の老舗豆腐店のもの。時代の流れで作業の機械化が進む中、この店では一から職人による手作業で作られており、香ばしさも格別なのだとか。他にも、「正々堂々」に使われるしょうゆには、淡口醤油発祥の地である兵庫県たつの市産の“うすくち醬油”を使用。同店は、こうした地域の食材との出会いの場にもなっています。
籠谷さんは今後について「姫路と言えば姫路城の存在が大きいかと思いますが、食の魅力も、もっと皆さんに知っていただきたいです」とした上で、「全国各地にあるおでんの中で、姫路おでんが一番おいしいという自負があります。うでんはここでしか食べられない。新たな名物として発信し、地域を盛り上げていきたい」と意気込みました。
(取材・文=洲崎春花)