海に囲まれた島国・日本で、非常に重要な海の安全。船の航路の管理などを行い、海の安全を守るのが、海上保安庁が運用する海上交通センターに勤務する“海の管制官”です。『マリンタクトKOBE』に所属する海の管制官が、このたび、ラジオ番組に出演。海の安全を守る仕事について話しました。

『マリンタクトKOBE』は、大阪湾海上交通センターの愛称。海上交通センターが船を正しく導く様子を、オーケストラで指揮者がタクトを振る姿にたとえて、“航路のハーモニーを奏で続けることを願う”という思いが込められています。船の航路の管理や船舶の安全に関する情報提供を行うことですべての船の安全を守る、それが海の管制官です。
管制官を務める山田さんは、“海の管制官”の仕事についてこのように語りました。
「私たち海の管制官は、通行する船舶が安全な距離を保って航路を航行できるように、巨大船などの入航時刻や入航順序の調整をするほか、漁船の操業状況だけでなく、気象・海象・浅瀬やのり網の存在、ほかの船舶との接近状況を把握し、各船に必要な状況を提供しています」(山田さん)
同じ管制官の西原さんも、「1分1秒が大切な世界なので、レーダーを見ながら瞬時に判断して情報提供を行わないといけない世界。集中力も大切です」と、その大変さを語ります。ゆっくり動くイメージのある船ですが、ゆっくりとしか動けないからこそ、前もって指示を出すことが大切だといいます。
マリンタクトKOBEのような海上交通センターは全国に7か所あり、船舶が特に混み合う海域にしぼって設置されているそう。
たとえば、神戸港でみられる大型船の運航では死角が多さがポイントに。そのため、山田さんによると、「小型船などが急に横切ってくると、まったく見えていないので危ないんです。なので、『こんな船舶が近づいてますよ、注意してください』という警告として情報提供をして、大型船がきちんと通れるようにしています」とのことでした。

マリンタクトKOBEでは、船舶向けのラジオ放送を行っているのだそう。神戸の中波放送『マリンタクトKOBE』(海上保安庁)が運用するラジオ「おおさかマーチス」は、明石海峡をはじめ、大阪湾を行き来する広いエリアの船舶に向けた放送を自動音声で行っています。ただ、今年7月に廃止が予定されているそうです。
30年前には、実際にラジオブースで放送を担当していたという山田さん。「(放送の廃止は)悲しくはあるんですけれども、もっと効率的で有効な情報提供の方法ができてきた。ユーザーが分かりやすい・見やすい情報提供ができるようになってきた。進化したということですね」と、変化を感慨深く語りました。
じつは、乗り物酔いがひどく、「船の上で過ごすことの多い海上保安庁に入ることはできない」と思っていたという西原さん。知り合いの現役海上保安官から教えてもらったことをきっかけに、海の管制官を目指したそうです。
交代制とはいえ24時間働きつづける大変さはあるとしつつ、「でも、本当にやりがいを感じる。仕事では、情報提供をしていることに対して、船の方々から『ありがとうございます』などの言葉をいただくことが多いので、幸せになれるというか、達成感のある仕事だなと思っています」(西原さん)と、やりがいを語りました。