世界や日本の生活の中で使われてきた民具の魅力を「見つけて」、ひとつひとつ「みつめて」、そこに宿る「知恵の素」を探る特別展、「民具のミカタ博覧会-見つけて、みつめて、知恵の素」が、国立民族学博物館(大阪府吹田市)で開かれている。2025年6月3日(火)まで。

民具とは、日常生活の中で必要なものとしてつくられ、使われてきた暮らしの造形で、同じ発想・目的でも、地域によって形状や素材が異なることがある。1970年の大阪万博で「太陽の塔」の地下に「人類の原点」として展示するため民族資料が世界中から集められた。その収集のために結成されたのが「日本万国博覧会世界民族資料調査収集団(EXPO’70 Ethnological Mission)」、通称「EEM」。万博終了後、コレクションは同館に寄贈された。また同時代に民俗学者・宮本常一が中心となり、武蔵野美術大学生活文化研究会と近畿日本ツーリスト日本観光文化研究所が日本の民具を収集した。今展では「EEMコレクション」と「ムサビ・コレクション」を紹介し、世界と日本の民具の共通点や違いを感じ取ってほしいという。

展示は「雪の歩きかた」や「細すぎる人」「表情豊かな精霊」など、36のトピックに分けられている。「どこから見てもOKです。1つのトピックをひとつのパビリオンに見立て、それぞれに見ることができます。その上で各トピックのつながりや関係性も見えてくると思います」と同展の実行委員長を務める日高真吾・国立民族学博物館教授は話す。丸テーブルにはEEMコレクションからの民具が1~2点、それを取り囲むように四角いスペースにムサビ・コレクションが並ぶ。世界と日本の民具を比較してみることで、それぞれの個性や違い・共通点が見えてくる。「これは誰が、どのように、どんな場面で使っていたのだろう」、想像力をフル活用してみていくと、新たな発見もある。
パプアニューギニアの「うなり板」は、男子の成人儀礼や葬儀で用いられた。片端に穴があり、ひもをつけてぐるぐる回して風切り音をだす。その音は精霊の声とされる。板の表面には生き物に見える模様や表情豊かな精霊が描かれている。一方、日本には、弓張りにした糸やテープ、荒縄などが、空気との振動で鳴る「うなり」をつける凧がある。正月や端午の節句にこどもの誕生を祝って揚げる儀礼的な道具でもあり、その音は厄払いとなる。


赤ん坊を背負う時、日本ではおんぶひもを使うことが多く、背負っている人と赤ん坊は同じ方向を向くが、メキシコではおくるみで包んだ赤ん坊を背負う背負い板を用いる。この時、2人は背中合わせとなる。

また会場内では、EEMコレクションから気になる1点を選ぶ「推しミング総選挙」や、「民具の漢字テスト」など、来館者が参加する様々なワークショップも展開する。
日常生活で使われた民具は大量にあり、「最近は『民具をいらない』という博物館も多い」と日高教授。その応援の意味と「いろいろな角度から見てほしい」という思いからタイトルをあえてカタカナで「ミカタ」としたと話す。
「民具とは、大量生産の生活用品を比べた時、インダストリアルデザインの1歩手前の最終形態。人々の生活の中で、手作りで、収れんされたデザインを持つもの」だと、日高教授は話す。「表現の仕方や個性は違っても、ローカルと世界に共通するものがある。そこを感じ取ってほしい」という。





