《2》震災報道の検証 【3-A】放送体制について
【3-A】放送体制について
(1)指揮系統
・編成制作局長が午前6時30分、担当役員が午前7時20分頃出社、午前7時30分、震災放送本部を設置した。
この時点では、まだ災害状況などはほとんど把握できていなかったが、地震の規模、社内の様子、それまでに入っていた断片的情報から大災害であるという認識に立ち、とりあえず以下の点の確認をした。
・午前6時からすでに特別報道体制(CM・番組カット)に入っていたが、そのまま継続する。
いつまで特番体制をとるかについては、その後の状況で判断する。
・報道方針としては、被災地の情報、特に災害状況、住民の安否の情報、さらにライフライン、交通、道路情報ほか地震に関するニュースを可能な限り報道することによって被災した人々の不安を解消する。
・当面の放送維持のため、人員の把握につとめる。
・取材体制はすでに稼働しているラジオカーに加え、もう2台を派遣する。
県・市の対応を取材する要員、県警取材要員の確保につとめる。
更に余裕があれば、災害地等への取材要員を増やす。
・安否情報(安否を放送することは現場と協議済み)は、電話受付けのための要員(社員)が揃う午前8時に放送告知、受付を開始する。
・人員配置は人数が読めないので、オンエア部門、取材部門など重要部分に優先配置する。
他セクションにも応援を求める。
・他局・リスナーからの問い合わせ、協力依頼、苦情処理は本部があたる。
・可能な限り自社の放送をモニターし、適正な形を求めていく。
放送内容については、担当者を含め合議する。
・その他の指示
・地震関連ニュースは正時にまとめる。(震災報道)
・安心を与え、不安をあおらぬよう注意する。(震災報道)
・できるだけわかり易く、くわしく、何度も繰り返す。(震災報道)
・出退勤の時の本部への報告(対社員)
・安否や各種情報の保存(対社員)
・本部系統図
(放送チーム)
(取材チーム) 局次長・報道制作部長
(本 部 長) (副本部長) (情報デスク)
担 当 役 員 局 長 (技術チーム) 技術部長
・本部の役割
本部長 統括
局長 外部対応・総合配置
各デスク 放送進行・人員配置
(2)要員の確保
連絡がとれない社員及び連絡がとれても交通事情等で出社できない社員がおり、全体として要員の確保は難航した。
必然的に出社できた人間への負担は厳しいものになった。
また、平均1日10人近いタレント、外部委託業者が放送活動に、積極的に参加してくれたため、社員の不足を補う形となった。
更に、営業局、総務局、関連企業などの社員も放送活動に加わり、被災各地からのレポートをはじめ、電話受けなどに活躍した。
放送現場の参集状況
1月17日
地震発生時:社員3人/外部委託者8人/合計11人
正午頃:社員23人/外部委託者10人/合計33人
20時頃:社員18人/外部委託者8人/合計26人
1月18日
8時頃:社員20人/外部委託者9人/合計29人
正午頃:社員25人/外部委託者11人/合計36人
20時頃:社員20人/外部委託者8人/合計28人
1月19日
8時頃:社員23人/外部委託者9人/合計32人
正午頃:社員27人/外部委託者10人/合計37人
20時頃:社員22人/外部委託者8人/合計30人
1月20日
8時頃:社員17人/外部委託者7人/合計24人
正午頃:社員30人/外部委託者9人/合計39人
(3)器材の確保
・出先からの放送中継回線は無線と電話しかなく、無線回線確保のため、以下の措置をとった。
400MHZ帯ワイドFM本社受信基地の確保
400MHZの受信基地は西から鉢伏山(須磨浦ロープウエイ山頂)、本社ビル屋上、摩耶山頂(SUN-TV送信所)の3カ所があり通常適時切り替えて使用している。
震災当日、停電のため摩耶山頂以外の受信基地は使用できなかった。
本社屋上は一般電源を使用していたため停電した。
本社屋上には自家発電源を供給できないため400MHZ受信機をマスターにおろした。
中継用のコーリニアアンテナと同軸ケーブル、マイクスタンドの大を使い、ガレージの屋根に受信アンテナを設置した。
150MHZ帯ナロー無線機の音声を放送中継回線に立ち上げる150MHZは本来中継連絡無線として使用していたため、放送回線には立ち上げていなかった。
アンテナは本社屋上。 本体はマスターに設置していたため使用可能であった。
・被災スタジオからの避難
マスターは壁が被害を受けて落ちてしまったが、各ラック等は幸いにも無傷であった。
しかし、スタジオが使用不可能なためマスターはそのままにしてオンエアースタジオを移設することになった。
幸いほとんど被害を受けていない本社ビル隣の関連企業が、PA・レコーディングミキサー養成用に使っていたスタジオが2つありこの一つをオンエアースタジオとした。
このため、マスター下のホールまで24対音声マルチケーブルをスタジオまで敷設し、放送回線とした。
臨時オンエアースタジオからのプログラム音声系統
表
先方ハードコピー使用
臨時スタジオ機材の確保
中継用12CHの卓、4CHミキサーをオンエアー卓とした。
モニタースピーカーは中継用アンプ付きスピーカーを使用。
各機器の接続ケーブル、フェーダーユニットなどすべて中継用のものを流用した。
テープレコーダー4台、DCプレーヤー2連1台録音スタジオから持ち出した。 電話ハイブリッド、切り替え機は旧オンエアースタジオのものを使用した。
24CHマルチケーブル入力素材
放送プログラム
ウェーブモニター
摩耶山400MHZ
電話回線
中継用INS
共同INS
RFネット放送回線
交通管制センター
子時計用時計パルス
マスター監視用ビデオカメラ映像・音声信号
マスター連絡用2WTel
臨時スタジオ設置では中継用機材を所有していたためフルに活用した。
また、中継機材等のメンテナンスが行き届いていたためすぐに使用できた。
中継等の構築プランニングが日頃から行われていたため難なくこなすことができた。
(4)人員配置(配置ベース)
本社
ニュースデスク / 1日2交替 / 2~3人
オンエア担当D / 3時間交替 / 1~2人
オンエアAN / 3時間交替 / 2~3人
情報受け / 3時間交替 / 5~6人
技術(他に機器保守) / 1日3交替 / 1~2人
現場
ラジオカー / 1系統当たり / 3人×4系統
県・市災害対策本部 / 1~2人
県警警備本部 / 1~2人
ポイント取材 / 不定
芦屋・西宮災害対策本部 / 1人
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