7年8か月続いた第2次安倍政権は、戦後政策の大転換とされた「集団的自衛権」の行使を可能とした安全保障法制や、「特定秘密保護法」、「テロ等準備罪」(いわゆる「共謀罪」)など法律を次々と成立させた。これらを「レガシー(遺産)」として評価するべきなのか、藤本尚道弁護士(兵庫県弁護士会所属)に法律家としての立場でどう見たのか聞いた。
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■「安全保障法制(2015年9月成立)」これまでとは一線を画したような印象を受けるが、どう見るか?
安倍政権は、閣議決定によりこれまでの憲法解釈を変更し、集団的自衛権の行使及び集団安全保障を容認した。そもそも憲法は時の権力者の権力行使に制約を加える、いわゆるチェックするためのものである。したがって憲法規範が政府の解釈次第で変わってしまうなら、憲法そのものの存在価値がなくなってしまうし、法律の普遍性がなくなり大変危険。仮に政権交代したらどうするのか……。安倍首相ではなく、自民党内でも主義が違う人物が総裁になり、政権を掌握したとしても通用しないのではないか。
■「特定秘密保護法(2013年12月成立)」については弁護士会も猛反発、何が「特定秘密」にあたるのかも判断が難しかったように思うが?
公務員の情報漏えいや記者などが「特定秘密」を不当に入手したりした場合は、10年以下の懲役が科せられることになる。気が付いたら同法違反で逮捕されることが起こり得るわけで、国民にとっては委縮効果が高い。「特定秘密」の保護を理由に、国民の知る権利や報道の自由が制約されて情報公開に一定の網が掛けられる可能性もある。
政府にとって不都合な情報を「特定秘密」に指定して国民に知らされるべき情報を隠ぺいしたり、言論弾圧に利用されたりしないか、弁護士としては看過できない。決して大げさな話ではなく、エスカレートすれば戦前の「治安維持法」のようになるおそれもある。
安倍首相は、よく「私を信じていただきたい」と発言した。特定秘密保護法・共謀罪などの法案審議において問題点を指摘され、法律が「悪用」される場面を想定した質問を受けると「断じてそのようなことはしない。私を信じていただききたい」などと反論したものだ。