7年8か月続いた第二次安倍政権。2020年に入って検察官らの定年を引き上げる国家公務員法改正案をめぐる騒動が起きる。野党は東京高検検事長だった黒川弘務氏の定年を延長した1月の閣議決定と関連付け「恣意(しい)的な人事で三権分立が脅かされる」と攻撃。芸能人のツイッターでも「#(ハッシュタグ)検察庁法改正案に抗議します」として批判が広がり、政府は国家公務員法改正案の廃案を余儀なくされた。法曹界でもさまざまな意見が出た。藤本尚道弁護士(兵庫県弁護士会・所属)に聞く。
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■多くの国民は「いったい、何を目的としたものだったのか」と思ったのではないか?
安倍政権の特徴として、「忖度(そんたく)」と「強力な人事権」という官邸のイメージは日に日に色濃くなったように思う。
安倍首相は、黒川氏の定年延長を「法務省の提案」などと言ったが、これは明らかに「詭弁」である。
経緯として、まず法務省は「黒川氏は定年退官、林氏を名古屋高検から東京高検へ」と提案、官邸側が難色を示したため「稲田検事総長は1月末で勇退、黒川氏が検事総長」との代案が浮上した。しかし今度は稲田検事総長が猛反発。稲田氏は2年間を務め上げて2020年7月に林氏へバトンをつなぐ意思が固かった。
それでも官邸は黒川検事総長を実現したい。そこで官邸は法務省に対し、黒川氏の退職が林氏より後になるように、定年延長を踏まえた人事案の策定を指示。法務省はやむを得ず「黒川(東京高検検事長)続投」のため定年延長含みの人事案を策定。
この最後の部分のみをとらえて安倍首相は「法務省の提案」などと言う。しかし、黒川氏の定年延長を主導したのは官邸。最終的に「閣議決定」したのはまさに安倍内閣である。安倍政権は、まさに「検察庁法」と「公務員法」との関係を勝手に解釈変更して、黒川検事長の定年延長を敢行したにすぎないと思う。
■議事録からも明らかな「超スピード審議」