『安倍1強』の7年8か月(5)冷えた日韓どう見る 国際舞台での存在感は? 神戸大大学院・木村 幹教授 | ラジトピ ラジオ関西トピックス

『安倍1強』の7年8か月(5)冷えた日韓どう見る 国際舞台での存在感は? 神戸大大学院・木村 幹教授

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2019年3月1日
「三一独立運動」から100年のソウル市内 旭日旗は反日のシンボルとも(2019年3月1日 画像提供・木村幹さん)

■「古いレシピ」とは?

 安倍首相の韓国での本来のパートナーは保守派である朴槿恵氏だった。だからこそ同じ保守・親米派(左派とされる文在寅大統領とは違い)であり、岸時代とつながる「反共」、冷戦時代の価値観を持っていて(昔は米ソの冷戦)が今では米中の「新・冷戦」で日本と韓国はアメリカと組んで中国、あるいは北朝鮮に圧力をかけることが当初の思惑だった。

 朴槿恵氏は朴正煕(パク・チョンヒ)元大統領の娘であり、保守派の中でもかなり右側に位置するためにパートナーシップを組めるだろうと考えていた。と同時に北朝鮮に対しても昔ながらの、水面下での外交をすることによって取引をして何とかやれるだろうと。これが古いレシピ。いわゆる旧・冷戦時代の、外務省などが水面下でまとめて交渉を尽くし、日韓、日朝関係をまとめるやり方を押し通そうとした。

 しかし、時代はそうではなかった。韓国では外交をはじめ政治全般が常に世論にさらされ、水面下の交渉は世間の非難を受けるという風潮が進んでいた。一方日本は、米中の新・冷戦のなか巨大化する中国に圧力をかけるべく臨んだが、韓国はそうした動きは取れなくなっていた。そうすると、安倍首相のフラストレーションが溜まる一方だった。最後はどんどんカードを切っていくしかなかった。

2019年3月1日
「三一独立運動」から100年のソウル市内(2019年3月1日 画像提供・木村幹さん)

■日韓は冷え切った、というのが日本側の印象だ。ここまで冷え切ると想像していた?

 韓国では文在寅政権に代わり、もう少しトーンダウンするのかなと思っていたが、ここまで冷え切るところまでは想像していなかった。文在寅大統領は日韓関係に関与しないというスタンス。たとえば徴用工問題に関しては司法の問題、従軍慰安婦問題は市民団体が関わっているから、というスタンス。この間に徴用工や慰安婦の方々の高齢化が進み亡くなられていくなか、「ちょっと冷酷な」印象もぬぐえない。もう日韓関係で汗をかかないという印象がある。それに対して安倍首相は自分で何とかしたい、という全く対照的な図式だった。それが圧力というやり方だった。

 昔ならば日本と韓国が経済的に力の差があったので、それこそ「古いレシピ」を使って、日本側が韓国に圧力をかければ何とかなったが、今はそうはいかない。日本が弱くなったというよりは韓国が強くなった、グローバル化の中で世界での日本の相対的な重要性が下がった、という見方もできる。そうしたなか「安倍流の古いレシピ」、古いやり方が通用しなくなった。どんどんカードを切ったが、文在寅政権を動かしようがなくなった、北朝鮮に対してもしかりで、強硬策を打って日本政府の独自制裁によって2010年以降は貿易がほぼゼロとなり、手の打ちようがなくなったのと同じ傾向が出た。韓国に関しても同じだったのだ。これは安倍首相が懸命になっていたからこそ、カードを早回しで切っていったという見方もできるが、カードを切り続けて、全部なくなったら、残るのは失望だけだったという印象を受けた。

2019年3月1日
「三一独立運動」から100年 故・朴正煕大統領を模したコスプレも(2019年3月1日 ソウルにて 画像提供・木村幹さん)
2019年3月1日
「三一独立運動」から100年 植民地時代の旧・日本軍をイメージした兵隊(2019年3月1日 画像提供・木村幹さん)
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