降車すると同時に、屈強な男性が「君たちの担当はオレだぜ」と言わんばかりの仁王立ちで自分のタクシーへ誘導してくる。
ほとんど連行のような形でメーターのないローカルタクシーに乗り込む日本人ふたり。簡単な値段交渉を終えると「君たちはオレに当たって“大正解”だな!」と運転手は笑いながらサングラスをかけた。
「私はキリスト生誕の地に行きたいです」
「ぼくはバンクシーの壁画を見に行きたいです」
「んー、じゃあ間を取って……、ここだな!」
なぜか日本人ふたりのどちらの要望も採用されないまま、タクシーは発進した。
(うわー、どこが“大正解”やねん…。今日はエイラートにはたどり着けそうにないな……。)
陽気なタクシー運転手に案内されるまま、ぼくたちは高台に到着した。紀元前37年、ローマ帝国により「ユダヤ王」に任命されたヘロデ王によって築かれた“ヘロディウム”という建造物の跡地だった。
広大な景色を背に遺跡の中へと進んでいく。鍾乳洞のような狭い空間をいくつか通り抜け、再び地上の光を浴びる頃には、さらに標高の高い場所にいた。
遺跡内に広がる劇場や水路を見ていくなかで、当時の技術力に感心しつつ、大昔の人々の暮らしに想いを馳せた。
【『独身リーマン、世界へ』イスラエル編 アーカイブ】
(1)独身リーマンがイスラエルに行って、すぐ帰りたくなった話
(2)イスラエルで迎えた、はじめての朝
(3)イスラエルの公衆トイレでドキドキ体験?!
(4)聖地・エルサレム到着
(5)エルサレムの旧市街地で感じた「人間の暮らし」
(6)「嘆きの壁」の2つの秘密
(7)キリスト最期の地「ゴルゴダの丘」
(8)エルサレムの早起きは三文の得ではなかった!?