兵庫・京都・大阪の各府県で夫や内縁関係にあった男性計4人に青酸化合物を飲ませ、うち3人を殺害したとして殺人と強盗殺人未遂の罪に問われ、一、二審で死刑判決を受けた筧(かけひ)千佐子被告(74)の上告審判決で、最高裁第3小法廷は29日、被告の上告を棄却した。死刑が確定する。
6月8日の上告審弁論で、弁護側は認知症が進行し「刑事裁判を受けていることも理解できない状態だ」として、審理を差し戻して精神鑑定をするべきだと主張。検察側は上告棄却を求めていた。
最高裁は判決で、結婚や遺言により遺産を取得できる状態で3人を殺害しており「財産的利益を得ようとした動機に酌むべき点はない」と述べた。また結婚相談所で次々と高齢の被害者と知り合い、将来をともにする相手として自身を信頼させ、青酸化合物入りカプセルを服用させたと指摘。「計画的かつ巧妙で、強固な殺意に基づき冷酷だ。同種の事件を6年間に4回繰り返し、人命軽視の態度は顕著だ」とした。その上で「被告が高齢であることなどを考慮しても、死刑はやむを得ない」と結論付け、裁判員裁判だった一審京都地裁・二審大阪高裁の判断を是認した。
そして、死刑は残虐な刑罰を禁ずる憲法に反するとした弁護側の主張について、判決は「理由がない」と否定。被告が認知症で心神喪失状態なのに一・二審で公判を止めなかったのは違法だとする訴えも退けた。
一・二審判決によると、2012年3月~2013年12月、遺産取得の目的で夫や、内縁関係だった2人に青酸入りのカプセルを飲ませて殺害した。また、2007年12月には、借金返済を免れるため神戸市北区の知人男性を殺害しようとした。