旧優生保護法・兵庫訴訟 原告請求棄却も、立法目的「極めて非人道的」神戸地裁判決 | ラジトピ ラジオ関西トピックス

旧優生保護法・兵庫訴訟 原告請求棄却も、立法目的「極めて非人道的」神戸地裁判決 

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 旧優生保護法(1948~1996年)のもとで不妊手術を強いられたのは違憲だとして、兵庫県内の聴覚障害者の夫婦2組と脳性まひのある神戸市の女性の計5人が国に計5500万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で神戸地裁は3日、旧優生保護法を違憲と判断した。しかし賠償請求はいずれも棄却した。原告5人は控訴する方針。

 一方、厚生労働省は「国の主張が認められたと認識している」とコメント。手術の被害者に対し、2019年に施行された救済法に基づき「着実な一時金の支給に取り組む」とした。

開廷前の神戸地裁・法廷<※代表撮影 2021年8月3日>
開廷前の神戸地裁・法廷<※代表撮影 2021年8月3日>

 全国9地裁・支部で起こされた損害賠償請求訴訟の判決は6件目。違憲判断は仙台、大阪、札幌の3地裁判決に続き4例目となった。これまで国に賠償を命じた判決はない。

「不当判決」神戸地裁前で原告弁護団ら<2021年8月3日 午後2時15分>
「不当判決」神戸地裁前で原告弁護団ら<2021年8月3日 午後2時15分>

訴状によると、原告の夫婦のうち1組は兵庫県明石市に住む夫(89)と妻(88)。妻は1960年ごろ、妊娠判明後に中絶手術と不妊手術を受けさせられた。もう1組の県内の80代夫婦は1968年ごろに夫(2020年11月・病死)が不妊手術を強いられた。また神戸市の女性(65)は12歳だった1968年、理由を告げられないまま不妊手術を受けさせられた。

 神戸地裁は3日の判決で、「旧優生保護法の立法目的は極めて非人道的であって、個人の尊重を基本原理とする憲法の理念に反することは明らかだ」と指摘した。原告らの損害は強制不妊手術が行われた1960年代に発生し、精神的に著しい被害を原告らに与えたと認められ、原告らは損害賠償請求権を有していた。しかし手術が行われた頃に訴訟提起が困難だったとしても、遅くとも1996年の法改正の時点では手術が不法行為に当たると認識できた。そして2018年~2019年の提訴までに20年の「除斥期間」が経過したため、損害賠償請求権は消滅したと判断した。

全国で6件目の判決 違憲性の指摘は神戸地裁が4例目となった<※代表撮影 2021年8月3日>
全国で6件目の判決 違憲性の指摘は神戸地裁が4例目となった<※代表撮影 2021年8月3日>

 神戸地裁の判決は旧優生保護法の違憲性に加え、1996年まで改廃しなかった国会の違法性にも踏み込んだが、20年で損害賠償請求権が消滅する「除斥期間」の壁が立ちはだかった。弁護団は、優生条項は違憲で、国民の憲法上の権利利益を違法に侵害しており、1996年まで長期間にわたって改廃しなかった国会の責任を厳しく追及したが、これも「国会の裁量権に委ねられる」と退けた。

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