自宅が平地にある場合は「凄い雨だな」と思うだけだろうが、近くに大きな河川や山の急斜面や崖があるとそんなことを言っておられない。土塊が水を含むと、浸透した水が土粒子間に入って間隙水(かんげきすい)となる。こうなると間隙水は圧力が高まり、土粒子どうしの結合が弱くなり土は緩くなる。地盤が水を含むと緩くなるのは以上のような理由による。地盤が緩いということつまりは柔らかくなるということであり、災害が起こりやすくなるのである。
国土交通省によると、全国で土砂災害の起こる危険箇所は53万か所もある。土砂災害は全国で年間平均1000件も起こっているという。
土石流、地すべり、がけ崩れ、雪崩の4つについて被害のおそれのある箇所をそれぞれ「土石流危険渓流」「地すべり危険箇所」「急傾斜地崩壊危険箇所」「雪崩危険箇所」といい、これら4つを総称して「土砂災害危険箇所」といっている。これをもとに、現在は土砂災害防止法により「土砂災害警戒区域・土砂災害特別警戒区域」の指定を進めている。民家に迫っている箇所は土砂災害警戒区域等に指定し、様々な工法で防止工事が行われている。
土砂災害が起こる可能性の高い箇所は急傾斜地の麓、山地で造成工事を行った際に尾根を削った土を谷に盛り土して造成した箇所、扇状地といって川が山地から平地に流れ出る扇形の土地などである。
7月3日、静岡県熱海市で起きた土石流は当初自然災害のように思われたが、後に山地を開発した業者が申請した以上の残土を谷に不法投棄し盛土したことがわかった。盛土は水を含むと大変危険なので、水抜きを設置するよう法律で定められている。市当局は開発業者に行政指導したが逆に恫喝され、水抜き工事も行わずそのまま放置され、今回のような災害が起こった。これは自然災害ではなく人災である。これでは被害者は怒りが収まらない。刑事告訴に至ったのは、無理もないであろう。
災害に災害に遭わないためには、防災訓練に参加したり、自治体から出ているハザードマップで確認しておくなど自分で情報を収集したりしておくことが大事である。インターネットで検索すれば実に様々な情報が発信されていることがわかる。