兵庫県宍粟市にある老舗酒造メーカー・山陽盃酒造が、りんごのお酒「CIDRE RonRon(シードルロンロン)」の新商品「Prototype(プロトタイプ)」を開発した。
山陽盃酒造は、1837(天保8)年創業。日本酒「播州一献」「ののさん」を製造販売している。
山陽盃酒造の壺阪雄一専務によると、日本酒とシードルは、原料は違うが、日本酒の杜氏の技術をシードルの醸造に応用できるという。山陽盃酒造が初めてシードルを発売したのは、2020(令和2)年12月。宍粟市をはじめ、兵庫県内にあるりんご園のりんごを使ってお酒を作る、初めての試みだった。
宍粟市にもおいしいりんごがあることを広く知ってほしいという思いと、2018(平成30)年に起きた火災で、酒蔵の大半を消失したことも、シードル醸造のきっかけとなった。このとき、地元の人たちから力をもらい、地域との結びつきをさらに強め、宍粟だけでなく兵庫全体の魅力をもっと広く発信しなければと痛感。「地域と酒造業界、消費者が一緒に楽しんで盛り上がるのに、シードルの醸造はピッタリではないか」と、挑戦がスタートした。
そして、使い慣れた清酒酵母だけを使って完成した「CIDRE RonRon(シードルロンロン)」は、アルコール度数が5~8%と低アルコールで、フルテンフリー、プリン体フリー。ドライとセミスイートがあり、セミスイートは若い女性や、アルコールが高いお酒が苦手な人にも「飲みやすい」と好評だ。ドライは、すっきりとした味わいが「シードルは甘いお酒」と思っていた愛飲家を魅了している。
シードルロンロンの新商品「プロトタイプ」は2021年秋に完成する。プロトタイプは「原型」や「試作」という意味があり、それぞれタンク1つずつ(1タンク約600リットル)しか醸造しない試験醸造。山陽盃酒造のオンラインショップで限定販売される。杜氏の醸造技術がシードルにどのように生かされるのか。新たな挑戦を消費者も一緒に楽しめる、またとない機会となりそうだ。
■シードル業界では初の酵母を使った「きょうかい酵母清酒用1801」
・パイナップルのような香りを生む酵母で、りんごと出会うとどのような味と香りを醸し出すのか、飲んだ人だけのお楽しみ。