2021年のプロ野球・日本シリーズは20日に開幕、クライマックスシリーズ(CS)を勝ち抜いた、いずれも前年最下位のオリックス・バファローズと東京ヤクルトスワローズが日本一を目指す。
オリックスはイチローを擁し、巨人を破り日本一となった1996年以来のシリーズ出場。その翌年から、神戸・六甲台のキャンパスから時に厳しく、時に優しい目を向けるのが神戸大学大学院教授(国際協力研究科・朝鮮半島地域研究)木村幹さん。四半世紀ぶりの優勝、実感がわかず「夢を見ているような、だまされているような……」研究室で興奮気味に話した。
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「僕は阪急ブレーブス時代から応援してるんだ、ってわけじゃないんですよ。近鉄沿線(東大阪)出身だからバファローズ、とも違うんだよなぁ」
木村幹さん。熱狂的なオリックスファンで知られるが、最初にプロ野球を見たのは大阪球場(大阪・難波)だった。小学生の時に、父親に連れて行ってもらったのが「南海対阪神」のオープン戦。以来、南海ホークスファンだった。しかし1988(昭和63)年、ダイエーに身売りして福岡へ。大阪を離れ、だんだん南海色が薄れていったのが寂しかった。応援する球団がなくなったのだ。
その後、神戸大に赴任したのが1997年。阪神・淡路大震災から2年、オリックス・ブルーウェーブ(当時)が読売ジャイアンツ(巨人)を制して日本一となった翌年だった。当時、神戸の街はまだ震災の傷跡が残っていた。東大阪で生まれて奈良・生駒で育ち、京都大に通った木村さんが「関西の東側」を生活圏をしていただけに、震災後の神戸をもっと知りたかった。野球をはじめスポーツ観戦が好きなだけに、神戸のプロ野球チーム・オリックスを応援するようになった。
1973(昭和48)年以来、優勝から遠ざかっていた南海ファンだった木村さんは、2000年代から低迷期に入るオリックスを見て、「俺が応援しなかったら、誰が応援するんや!」という心理が働くのだという。もし、オリックスが常勝軍団になっていたら、そこまで盛り上がらず、自分と一体化しなかったかも知れないと振り返る。「阪神ファンだってそうじゃないかな。1990年代の弱い時代の話をする人が多いのは、自分の人生の”いろいろ”と重ねるから。強くなっちゃうと拍子抜けするんですよね」。