【田中社長】 そこはやはり世界最高傑作の木造建築である姫路城の求心力。おかげで実は今、現地の大手旅行ガイドブック「petit fute(プティ・フテ)」がアフターコロナの需要を当て込み、兵庫県の酒と温泉を題材にした特集を組みたいと言ってきている。25年の大阪・関西万博を見据えた動きだ。あちらはそういう動きが実に早い。これをフランスの方々と播磨の酒をつなぐ足掛かりとしたい。
――一方で日本酒の国内出荷量は縮小の一途。
【田中社長】 と言いながらも吟醸酒など高価格帯はわずかながら増加傾向にある。当社はいち早く昭和の終わりに普通酒から高級路線「白鷺の城」の展開にシフトしてきたからホテルや料理店での取り扱いが増えており、国内での売れ行きは比較的安定していると言える。ただ、コロナの緊急事態宣言中はガクンと落ちた。今は戻ってきているが。
――海外での評価は?
【田中社長】 自社商品で言うと、フランスの日本酒コンテスト「KuraMaster」でのプラチナ上位受賞(18年と21年)で受賞式に招待されたのを機に知名度が上がり、LVMH運営のパリ高級ホテルメゾン「シュヴァル・ブラン」でも採用いただくようになった。日本の酒蔵が生き残るヒントはここにあるのではないか。日本酒を国内だけで消費する時代はすでに終わっていると考える。
――今年の抱負を。
【田中社長】 和食が世界遺産に登録され見直されているので、相乗効果で播磨の酒をさらに世界へ浸透させたい。はりま酒研究会の立場からは、海の幸、山の幸、あるいは観光面でもいろいろな要素で満ち溢れている地元の魅力を世界中に発信していく。
自社の目標としては、地域に根差した造り酒屋の原点に立ち返り、SDGsの観点から地元貢献できる手法を探りたい。おぼろげながらイメージが湧いてきているので、近々発表できればいいと思う。