故郷・キーウの変わり果てた姿を目にして、言葉を失った。
世界中全ての人に日本の商品をオンラインでスムーズに購入できる場を、と海外在住者向けに日本の商品を輸出する「ゼンマーケット」(本社・大阪市中央区)。
ウクライナ人とロシア人が共同で経営する。月商で5億円を超え(2020年)、アジア太平洋地域の急成長企業ランキングにも名を連ねるようになった。 コロナ禍でショッピングをオンラインに切り替える動きが急速に進み、インターネット通販サイトを通じた国際的な電子商取引「越境EC市場」も拡大、登録会員数は145万人を超えた。
共同代表の1人でウクライナ・キーウ出身のナウモヴ・アンドリイさん(39)が、ラジオ関西の取材に応じた。
2月24日のロシアによるウクライナ軍事侵攻以降、アンドリイさん自身が遠く離れた日本から祖国を案じる日々が続く。一方で、ウクライナ人として持ち続けていた「最悪のシナリオにならなければ…」という本音も語る。
アンドリイさんは憤る。「ロシアは明確に宣戦布告もせずに軍事侵攻してきたのです。 この状態がいつ収まるか、わかりません。 私たちウクライナ人としては、いかにして祖国を守るかしか選択肢はありません。ロシアとの停戦交渉は続いていますが、突き付ける条件はとんでもないものです。核の脅威をちらつかせ、ウクライナへ非武装化を求める一方ですから。はじめから交渉のテーブルにつこうとしていないのです。単なる時間稼ぎだと思っています」。
ロシアとウクライナの代表団による停戦交渉は、軍事侵攻から1週間となる日本時間の3月3日、ベラルーシとポーランドの国境付近で再開された。
ロシアは、ウクライナの非武装化・中立化を要求するなど強硬姿勢を崩しておらず、停戦が成立するかどうか見通しが立たない。
アンドリイさんは今回の軍事侵攻に、伏線があったとみている。「心の中で、軍事侵攻を信じたくなかった。戦いから免れますように、という願いがありました。しかし最後の最後、こうした悲しいことになり、残念に思います」。
今回のウクライナ危機をめぐって、そもそも互いにどう見ていたのか、という点がクローズアップされている。
プーチン大統領はかねてから「ロシアとウクライナは一体」と述べているが、ウクライナ側は「自分たちは独立した主権国家なのに、ロシアは我々をヨーロッパとロシアとの緩衝地帯に過ぎないと思っている」という認識が強いとされている。この“ずれ”が存在する以上、衝突は避けられなかったという考え方だ。
2014年、ウクライナの国民は親ロシアの大統領を追放した(ウクライナ政変・騒乱)。するとロシアは、ウクライナ南部のクリミア半島を併合した。
「あの時、ウクライナ人だけが『戦争だ』と騒ぎ立て、ロシアのプロパガンダに影響され、多くのメディアは『内戦だ』と報道していた記憶があります。しかし現状を見れば、ロシア側が持ちかけた戦争だったと証明できるのではないでしょうか」。