韓国大統領選「韓国のトランプ」VS「政権と対峙した元検事総長」《下》“冷えた日韓”に打つ手は?神戸大大学院・木村 幹教授 | ラジトピ ラジオ関西トピックス

韓国大統領選「韓国のトランプ」VS「政権と対峙した元検事総長」《下》“冷えた日韓”に打つ手は?神戸大大学院・木村 幹教授

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 これを日韓関係に当てはめれば、韓国のトランプと称される李氏が大統領になると、正面に座るのは岸田首相である。日本外交は外務省の事務方から積み上げる、いわゆる前さばきスタイル。首脳会談は形式的に”シャンシャン”で終わらせたい日本からすると、どんな発言があるかわからない、会談するまでわからないタイプの李氏はやりにくいかも知れない。李氏に影響力を持つ人はいるのか?と聞かれることがあるが、その影響力は李氏自身だ。誰も扱えない。李陣営が決めた通りに、一番しゃべってくれないのが李氏自身だというこぼれ話もある。

 一方、尹氏にブレーンには知日派のソウル大学教授もいて、自民党ともパイプがあるようだ。外交に関しては素人である以上、ブレーンの振り付け通りに動けばいいのだが、そうならなかった場合は危険だ。安全保障を重視する以上、軍事費は増えるだろう。竹島を守るスタンスを取るだろうから、部分的に日韓をライバル視する出てくるかも知れない。

保守系最大野党「国民の力」は韓国大統領府・青瓦台の奪還、政権交代を前検事総長、尹氏に託す
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 韓国の大統領は権限が大きすぎる。大統領の一言で、政府の動きがガラッと変わる。例えば公共事業を引っ張りたい、一方で再開発事業を止めたい、いろんな思惑を持った人々が大統領とその周辺に金品を持って行くことになってしまうケースが出てくる。問題は大統領の親族や知人などが受け取ってしまった場合。連座制があるため、逮捕されてしまう。
 韓国が日本と決定的に違うのは、社会全体がトップダウンであること。これは文化ともいえる。韓国大統領の位置づけはスーパーマンが財閥のトップになって、全てを解決するやり方だ。これは不正や、判断の根拠のあいまいさにつながりかねない。

木村幹著『誤解しないための日韓関係講義』(PHP新書)学生がオンライン研究室に訪問、質疑応答形式でわかりやすい
木村幹著『誤解しないための日韓関係講義』(PHP新書)学生がオンライン研究室に訪問、質疑応答形式でわかりやすい

 思い起こせば2017年、朴氏から文氏への大統領交代は、右派から左派への政権交代。極端に言えば右端から左端への変化だった。では、それによって日韓関係が大きく変わったか?変わっていない。北朝鮮に対しても、文政権の初期には変化があるかと思われたが、結局は変わらなかった。

文政権では日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)破棄を通告(のち凍結)「韓米日政府共有約定破棄!戦争犯罪謝罪賠償!」の文字〈2019年9月20日 ソウル市内 画像提供・木村幹さん〉
文政権では日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)破棄を通告(のち凍結)「韓米日政府共有約定破棄!戦争犯罪謝罪賠償!」の文字〈2019年9月20日 ソウル市内 画像提供・木村幹さん〉

 アメリカや中国でトップが変わると、何かを期待する声が上がる。しかし日本でもこの10年あまりの間、自民党から民主党(当時)への政権交代、再び自民党が政権を奪還し、アベノミクスなど多少の経済政策はあったものの、リーダーが大胆に舵を切ったかどうか。ポスト安倍晋三としての菅、岸田政権を考えれば、ドラスティックな変容を過剰に期待するのは時期尚早ではないだろうか。

木村幹教授 自著「韓国愛憎―激変する隣国と私の30年」を手に(神戸大学にて)
木村幹教授 自著「韓国愛憎―激変する隣国と私の30年」を手に(神戸大学にて)

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