新型コロナウイルス禍で、表現する機会そのものを失った芸術家らの支援のため、仁和寺が「国宝のある芸術祭」を企画した。テーマは「To Being」。運営スタッフは、仁和寺の若手僧侶たち。
前半は雅楽の演奏で始まり、仁和寺の若手僧侶らが仏教音楽「声明(しょうみょう)」を唱え、「金剛流御詠歌(こんごうりゅう・ごえいか)」を披露した。 そしてコンピューター音楽をバックに、プロジェクションマッピングによる華やかな映像が金堂に映し出された。
後半は、万葉歌人・大伴家持(おおとものやかもち)にまつわる伝説「松山鏡(まつやまかがみ※)」を基にしたテクノオペラ「観音抄」が、劇団「オペラ季節館」(東京都町田市)によって演じられた。演出した伊勢谷宣仁(いせや・のりひと)さんは、オペラに携わって半世紀。「舞台公演自体が中断し、アーティストがどのタイミングで動くべきか見極めるのが、非常に難しいコロナ禍、失ったものは大きかった。しかし人は困難に遭遇した時こそ、それを超えて生まれる新たな発想がある。そのきっかけを与えてくれたテクノオペラだった」と話した。
江戸時代前期、仁和寺の門前には京焼の陶工・野々村仁清(ののむら・にんせい)らが窯を作るなど、寺自体が文化拠点の役割を果たしたという。そしてコロナ禍の今、芸術家を支えようと、経費の一部をインターネットを通じて募る”クラウドファンディング”を始めた。瀬川大秀・仁和寺門跡は「文化の一大サロンが形成された歴史を、現代に継承できたのではないか。コロナ禍で改めて、その役割を認識できた。クラウドファンディングでは多くの支援をいただいた。これからも、こうした芸術祭を続けていきたい」と前を向く。
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仁和寺は888(仁和4)年に宇多天皇が創建、当時、法皇の住居を「御室(おむろ)」と呼んだため、別称「御室御所」と呼ばれ、皇室や公家が住職となり(門跡)受け継がれてきたが、明治維新以降、”宮門跡”の歴史は途切れ、現在は「旧・御室御所」と呼ばれる(※)。

