《変容する芸術・文化のあり方》「一目果たした“春の義理”」オペラ、歴史絵巻講談、ヴァイオリンを弾く僧侶… 世界文化遺産・仁和寺

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仁和寺の山門「二王門」 知恩院、南禅寺と並び京都三大門の一つとされる
勅使門の前に咲き乱れる桜

 仁和寺は1994年に世界文化遺産に登録された。国宝12点、重要文化財47件、その他の宝物など2万点以上が保有されている。2012年ごろからデジタルデータの有効性に着目、文化財の正確な記録のためデジタル化を進めている。このうち「戊辰戦争絵巻」上下巻のデジタル彩色画が2021年に完成した。もとはモノクロの木版画だが、彩色によってリアルに当時の戦いのシーンが鮮明によみがえった。

第三十九図「節刀(天皇から授かった任命の印としての刀)返上」原版(許可を得て撮影しています)
戊辰戦争カラー絵巻 第三十九図「節刀(天皇から授かった任命の印としての刀)返上」彩色版(許可を得て撮影しています)

 文化財のデジタル保存に取り組む「先端イメージング工学研究所」(代表理事・井手亜里(いで・あり)京都大学名誉教授)が全長計約40メートルもの絵巻を高精細スキャンで取り込み、デジタル化を進めて彩色した。約100倍に拡大した画像にコンピューター上で彩色する地道な作業で、約1年の制作期間を経た。

井出亜里・京都大名誉教授(写真左)と瀬川門跡
新政府軍(官軍)が掲げた菊花紋入りの錦の御旗も、高精細スキャンで取り込み彩色して立体感が(許可を得て撮影しています)

 絵巻の中で繰り広げられる激動の幕末維新物語(戊辰戦争は1968~1969年)、もともとは書物にしたらどうか、という話だったが、時の(明治)天皇は「勝ちと負け」に終始する史観を好まなかったとされ、そこで絵巻となったという。この絵巻に2022年1月、息を吹き込んだ女性がいた。

講談師・神田京子さんによるライブ「鳥羽伏見の戦いと錦の御旗」<2022年1月28~29日・仁和寺宸殿>
講談を通して日本人がたいせつにしてきた「和の精神」を説く 背後の掛軸には宇多法皇の御影

 講談師・神田京子さん。仁和寺では普段は立ち入ることのできない国の登録文化財「宸殿(しんでん)」の座敷で繰り広げられた講談ライブ。軽快な語りでの解説は、一部オンラインでも配信された。

 「フランス革命は6年間、(アメリカの)南北戦争は4年間。尊い命の犠牲はあったとはいえ、戊辰戦争はたった1年で一国がひっくり返るような大改革、根底には『やったらやり返す』ということを好まない民族性、日本人が長きにわたって大切にしてきた『和の精神』。そうした先人の思いを、決して忘れてはいけない。わかり合うことができないと、悲惨な戦(いくさ)になる、そういった教訓をこの絵巻から学びたく存じます。コロナ時代を生きる日本、誰かを責め、奪い合うのではなく、与え合う和の精神を再び取り戻したいものです…」。不安感がよぎり、とかく”人のせい”にしがちなコロナ禍、これではいけない。神田さんは講談をこう締めくくった。


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