神戸製鋼・石炭火力発電所 環境アセス訴訟「”公害国家”防げるか、日本の司法が問われる」控訴審敗訴の住民ら上告 | ラジトピ ラジオ関西トピックス

神戸製鋼・石炭火力発電所 環境アセス訴訟「”公害国家”防げるか、日本の司法が問われる」控訴審敗訴の住民ら上告

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 鉄鋼大手「神戸製鋼所」が神戸市灘区で増設中の石炭火力発電所2基について、環境影響評価(アセスメント)手続きに瑕疵(かし=不十分なこと)があるにもかかわらず、変更の必要がないとした経済産業省の確定通知は違法だとして、周辺住民らが国を相手取り、通知の取り消しなどを求めた訴訟の控訴審で、原告らは、訴えを棄却した大阪高裁の判決を不服として上告した。5月6日付。

 温室効果ガスの排出が多く、世界的に廃止される流れが強まっている石炭火力発電所について、環境アセスに対する国の判断の是非が初めて争われている。

神戸製鋼は関西電力に供給する石炭火力2基(計130万キロ・ワット)を増設(神戸市灘区灘浜東町)

 大阪高裁は2021年3月の一審判決と同様、 「CO2(二酸化炭素)の排出で生じる地球温暖化による健康被害は、発電所の周辺住民に限られるものではない」として原告適格を認めなかった。

 そのうえで「(アセスメント調査などの手続きが)適切かどうかの判断には、高度な専門性や技術が必要。(関係する法令に)調査を求める規定はなく、社会通念に照らして著しく妥当性を欠くとは言えない」として、経済産業大臣の裁量に逸脱や乱用はなかったとした。

 弁護団は「気候変動とそれを加速する CO2(二酸化炭素)の大量排出は、現時点でも違法な人権侵害であるとの法的認識が急速に広まりつつあり、世界各国の裁判所がこれを前提とした判決を次々に下している。しかし、日本でCO2の大量排出という重大な人権侵害行為を、現時点では行政訴訟では一切争えないとする控訴審判決は、憲法上保障されている『裁判を受ける権利』をも侵害する」との声明を出した。

 4月26日の控訴審判決後、弁護団は日本の気候変動に関する危機感の希薄性や、温暖化対策への切迫性がないと指摘していた。そのうえで「大気汚染物質に対する認識と対策の遅れを取る日本が、公害国家になることを防ぐことができるか、日本の司法の役割が問われている」としている。

 日本はパリ協定を2016年に批准、2020年12月、菅義偉首相(当時)も「温室効果ガスを2050年までに実質ゼロにする」と宣言している。

 住民らは2基の稼働差し止めを求める訴訟も神戸地裁に起こしており、係争中。

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