【中将】 当然、ここで脱落した男性ファンもいたでしょうが、女性が仕事も恋愛も積極的につかんでいくという生きざまに共感した女性ファンはそれ以上に多かったと思います。「ママドル」なんて言葉も生まれて、以後の聖子さんは唯一無二の存在になっていきます。
【橋本】 結婚して引退した山口百恵さんとは対照的ですね。たった数年の違いですが時代の変化を感じます。
【中将】 一方、明菜さんの一番は「難破船」(1987)でした。もともとは加藤登紀子さんの曲ですが、加藤さんの希望で明菜さんがカバーすることになります。救いようがなく暗い失恋の曲ですが、加藤さんがこれを明菜さんにカバーしてほしいと思ったきっかけのエピソードが面白いです。明菜さんの誕生日をお祝いするテレビ番組をつけていたら、明菜さんが不機嫌そうに「22歳の何がおめでたいんですか?」みたいなことを言い出して「この子に歌ってほしい!」ってズキュンときちゃったそうなんです。
【橋本】 明菜ちゃんヤバいですね……とことん暗い! でもそれがあの独特の個性になっているんですね……!
【中将】 明菜さんはこの後、妹の秋穂さんが勝手にデビューして揉めたり、近藤真彦さんと破局したりしてたいへんなことになります。
地球サイズの大きな愛を歌う「瑠璃色の地球」と打ちひしがれて海の底に沈む「難破船」……それぞれのファンがお二人にどんなイメージを抱いているかよくわかりますね。
(※ラジオ関西『中将タカノリ・橋本菜津美の昭和卍パラダイス』2022年5月28日放送回より)