自身への問責決議案に賛成する会派の市議2人に「選挙で落としてやる」などと発言をした問題を受け、2023年4月30日の任期満了をもって引退する意向を表明した泉房穂・明石市長(59)。
12日、議会終了後の会見で、問責決議案の可決が理由ではない(問責決議自体に法的拘束力はない)としたうえで、「2019年に明るみに出た市幹部への暴言問題(辞任後、出直し選挙で当選)以来、アンガーマネージメントなどに励み、同様のことがないよう努めてきた。今回の(市議2人への暴言や威迫は)は、“糸が切れてしまった”状態。暴言を吐いたのは事実で、市長としてはあるまじき行為だ」と改めて反省の気持ちを述べた。
泉市長は8日、市立小学校の創立記念式典で同席した市議会議長と市議に「賛成したら許さん」「次の選挙で落としたる」などと発言、泉市長は同日中にこれを撤回し、2人に謝罪している。2人が所属する会派は、市長に対する問責決議案を議会運営委員会に提出していた。
泉市長は会見で「市長就任以来、積もりに積もった思いがプチンと切れて、手当たり次第、暴言を吐いてしまった。『今後、もう暴言を吐かない』と釈明しても、信じてもらえない」と胸の内を語った。
そして、「明石市での数々の政策が市内外で評価を得ていることは十分感じていたが、要は私のキャラクターの問題。いわゆる“プレーヤー”としては市長の立場にいることに問題があると思った。今後はプレーヤーとしてではなく、心ある政治家を作ってゆく」と市長退任後のプランを明かした。
市長としての3期11年あまり、自ら多くのことを肌身で知った。「トップが変われば、街が変わることを感じた。だから、明石市だけで頑張るのではなく、政策アドバイザーや参謀役といった、明石市で打ち出した数々の街づくりや福祉での施策を全国に広めていくため、各自治体の応援団というスタンスを取りたい。国会(衆議院議員時代)での経験と、市長経験を生かし、こうした役割を担うのが一番かと思う。2023年4月30日までが任期だが、政治家としての泉房穂が終わり、政治家を育成する泉房穂が始まる」と述べた。
■議会との緊張関係、12年間続いた
初当選した2011年4月24日、多くの支援を取り付けた有力候補に戦いを挑み、市民だけを頼りに69票差で勝った。この日の統一地方選、最後の当選確実の一報は日付が変わる直前に届いた。「初めは市役所職員や議会との緊張関係の中、明石の街づくりを進めてきた」と振り返る。
犯罪被害者への経済支援をはじめ、高校生までの医療費や第2子以降の保育料の無料化、ひとり親家庭支援といった施策を次々に手掛けて行く。世代を問わず、市民からはこうした福祉面での評価がとりわけ高い。市外からは子育てに手厚い街として魅力的に映り、明石市は2021年まで9年連続で人口が増加した。
2021年、新型コロナウイルス禍で市民の経済的負担を緩和しようと、市民全員に5千円分のサポート利用券(金券)を配布する事業について、市議会が経費削減を求めて議案を「継続審査」としたが、泉市長はこれに反し、例外的に市長が議会の議決に代わり意思決定する「専決処分」で実行したことが議会で非難され、今回の問責決議につながった。
このことについて泉市長は「事前の調整も済んでいたのに、急きょ議会でひっくり返り、継続審査となったことに、議会対応での不合理さを感じた。議会の嫌がらせに屈して市民が困っていると思ったから専決処分にした。その後、議会との関係性のうえで特に感情的対立が、政策上のさまざまなことに飛び火した。結局、議会との緊張関係やあつれきは変わることなく、12年間続いた」と振り返る。