昭和の時代には給食のメニューにものぼり、多くの人が食べていた「くじら」。最近では提供する店が少なくなり食べる機会も減っているが、『こだわりや 隠れ家』(神戸市兵庫区)では、さまざまなくじらの部位を賞味することができる。オーナーの荻布昌利さんに話を聞いた。
過去に中央市場で働いていたという経験をもつ荻布さん。「おいしいくじらの魅力を知ってもらおう」と14種類ほどの部位を扱っている。これだけの種類を取り扱うお店は神戸でもなかなかないそうだ。
荻布さんがおすすめするのは、背びれから尾の付け根までの背側にある脂がのった霜降り状の肉で、最高級部位とも言われる「尾の身」や、舌の部分である「さえずり」、あご肉をおおっている部分の「かのこ」。
「この3部位は比較的クセが少なく食べやすいため、くじら初心者さんにはぴったりだと思います」(萩布さん)
通好みの部位なら、胸ビレの付け根あたりの「みゃくつぼ」やノドの奥にある「のどちんこ」。くじらを扱う店でも、なかなかお目にかかれない希少部位だ。
「クセはありますが本当においしいんですよ。くじら肉に慣れてくれば珍しい部位にもチャレンジしてみてほしいですね」(萩布さん)
荻布さんは中央卸売市場でくじら以外の魚も厳選して仕入れている。
「いいものを少しでも安く」と色つや、弾力、目の色などで新鮮さを見極める。お店では魚以外に肉のメニューも豊富で、「頻繁に来てもらっても飽きないよう、多彩な料理をそろえたい」と日々研究を重ねた結果、現在300種類ほどのメニューがある。
地酒の種類も常時50種類ほどあり、荻布さんは「一人3000円ほどで腹いっぱいになってもらえるはず」と胸を張る。
萩布さんの店は、かつては4席ほどのこじんまりしたものだった。「もっとたくさんのお客さんに来てもらえるような広さがほしい」と考えていたタイミングで現在の物件と出会ったのだそう。食材を突き詰めていこうという自身の信念から、屋号を『こだわりや』とし、今年で10年目を迎えた。
そこから『こだわりや 隠れ家』のほかに『こだわりや 海鮮丸』(神戸市兵庫区)、『こだわりや 元町』、『こだわりや 神戸館』(いずれも神戸市中央区)と多店舗展開をみせる。
「コロナで辛抱する2、3年でした」と萩布さんは振り返るが、お年寄りから子どもまで、男女問わずに来てもらいやすいお店を目指し、奔走する日々とのことだ。