兵庫陶芸美術館(兵庫県丹波篠山市)では2022年11月27日(日)まで、特別展「北澤美術館所蔵 ルネ・ラリック アール・デコのガラス モダン・エレガンスの美」が開催されている。今回の「リモート・ミュージアム・トーク」では、同館学芸員のマルテル坂本牧子さんに展示の見どころを教えてもらう。テーマは「フランス流モダン・エレガンスとガラスの魅力」。
兵庫陶芸美術館では、2022年9月10日(土)より特別展「北澤美術館所蔵 ルネ・ラリック アール・デコのガラス モダン・エレガンスの美」がスタートし、好評を得ています。本展では、19世紀末から20世紀前半にかけて活躍した、フランスを代表する装飾工芸家ルネ・ラリック(1860ー1945)によるガラス作品を紹介しています。
出品作品はすべて、長野県諏訪市にある北澤美術館(長野県諏訪市湖岸通り1-13-28)のコレクション。1983年に開館した同館は、バルブのトップメーカーである株式会社キッツ(旧北沢バルブ)の創業者・北澤利男氏が収集した、東山魁夷、山口華楊ら1960年代以降の現代日本画約200点と、アール・ヌーヴォー時代のエミール・ガレやドーム兄弟といった近代フランスのガラス工芸作品、そこに現・副理事長の岡野或男氏が収集したアール・デコ時代のルネ・ラリック作品約350点を加えたガラス作品約1000点を収蔵しています。
本展では、同館のラリックコレクションの中から182点を厳選し、初期から晩年までのガラス作品の変遷をたどるとともに、日々の暮らしに煌めきをもたらした様々なガラス作品をアイテムごとに展示。モダンで洗練されたデザインと、ガラスという素材の魅力と可能性を革新的に切り開いたラリックのガラスの世界をひもといていきます。
フランス北東部シャンパーニュ地方で生まれたラリックは、パリを本拠とし、前半生はジュエリー作家として活躍しました。19世紀末のパリは、植物や昆虫などの自然をモティーフにした優雅なスタイルが特徴の「アール・ヌーヴォー」全盛の時代でした。
ラリックは1900年のパリ万国博覧会でジュエリー部門のグランプリを受賞して一躍注目を集める一方、ジュエリーの装飾に七宝(エナメル彩)を用いるなど、早くからガラスという素材の可能性に注目し、あらゆるガラス製法にも精通していました。
ガラス工芸家へと転向するきっかけとなったのは、香水商のフランソワ・コティとの出会いからでした。ラリックは、コティ社のために香水瓶のガラス製ラベルを制作し、やがて香水瓶のデザイン・製造も手掛けるようになっていきます。
香りの魅力を視覚的イメージで見事に表現したラリックの優雅なデザインは高い人気を誇り、1909年にはコティ社から受けた大量注文を機に、パリ東方郊外にあるコンブ=ラ=ヴィルに工場を構え、本格的にガラス工芸の道へと進みました。ラリックは、ガラスの透明性を活かしたシンプルなデザインと、精巧な鋳型を用いた独自の成形法により、あらゆるアイテムをガラスで制作して、20世紀初頭のモダンな生活を彩っていきました。
1921年、ラリックはフランス東部アルザス地方のヴィンゲン=シュル=モデールに近代設備を整えた第二工場を設け、生産の拡大を図りました。大衆化へと進む時代の流れを見据え、より多くの人々に作品が普及することを目指していたラリックは、デザインの芸術性を損なうことなく、量産ができる体制を追求したことでも大きな成果を上げています。
◆「北澤美術館所蔵 ルネ・ラリック アール・デコのガラス モダン・エレガンスの美」
会場 兵庫陶芸美術館(兵庫県丹波篠山市今田町上立杭4)
会期 2022年11月27日(日)まで
開館時間 10:00~18:00(入館は閉館時間の30分前まで)
休館 月曜日
観覧料 一般1200円、大学生900円、高校生以下無料
電話 079-597-3961(代表)、FAX 079-597-3967
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