——作家に限らず、関係値が出来上がっているプロジェクトに後から参加することって、社会人になるとよくありますよね。でも変に遠慮してしまって、ビジネスの壁を超えられずに終わってしまう方も多いと思います。
確かにそうですよね。でも、そもそも向こうは“敵”だとは思ってないじゃないですか。むしろいっしょに仕事する新しい仲間だと思ってくれているはず。なので、こっち側の警戒心や敵意は捨てたほうが良いと思います。「一人でいたい人なんだ」と思われたら、逆に気を遣って離れられてしまうかもしれない。でも、こっちとしては「いやいや、本当は仲良くなりたいのに」……と。今後仕事をしていくチームとしても。
——そうですよね。でも、どうやったら壁を超えられるんでしょうか。
まずは「こいつ、かゆいところに手が届くな」と思ってもらえるような、有益な情報を話すことは大事だと思います。たとえば地方ロケに行ったとして、「この辺でおいしいお店どこかな」という話題になったら、パパっと調べたり。無理やり相手に寄っていくわけではなく、今話しているテーマで1歩先を行くような提案をするというか。これなら、自分としても無理してすり寄っていないし、「有益な情報を提供しているんだ」という正義がある。そういう小さいことから始めるのが良いんじゃないですかね。仕事の関係性だからといって仕事の話ばっかりしていると息が詰まるし、お互い素を見せられるシチュエーションがあると良いと思います。僕の場合、最近は“メシ”という不朽の話題から始めて、「近くにサウナありますよ」「メシのあと行きましょうか」という感じで、深い話ができるようになったりします。サウナとか散歩とか、コミュニケーションにつながるような趣味があると良いですよね。
◆友だちだからこそ、ケンカする
——長﨑さんの著書『それぜんぶ企画になる。』の軸には、「友だちと仕事する」という考え方があります。さまざまな切り口が考えられる中、「友だちと仕事する」を軸に置いたのはなぜですか?
実は、これをテーマにするのとても悩んだんですよ。「友達と仕事をする」って正直、鼻につきません?(笑) 僕自身、大学時代友だちが誰もいなくて便所メシをしてたのでわかるのですが、そもそも友達を作ること自体が難しいのに、友だちといっしょに仕事をするって。陽キャムーブ過ぎてハードル高いし、すっごい綺麗事に感じる。だけど、いろいろ放送作家の仕事をする中で「あがり」ってなんだろうと考えた時に、最終的にたどり着いたのがこのテーマだったんですよ。
——長﨑さんが考える「友だちと仕事する」ことの最大のメリットはなんですか?
「心中と感動をともにできる」ところですね。僕ら放送作家って、本来はあくまでも“企画のアドバイザー”なんです。いっしょに仕事する人からは「無責任なこと言いやがって」と思われやすい。ビジネスでつながっているドライな関係に過ぎなくて、僕はそこに体温がないことにずっと違和感があったんです。お互い、あえて踏み込めない関係性というか……。でもやっぱり、プロジェクトが終わったとき「良かったね」「楽しかったね」と言える関係性が良い。だって、本気でみんなでおもしろいものを作りたいわけだし。全員がプロジェクトに前のめりに取り組んで、いっしょに反省し合って、「じゃあ次どうしようか」を本気で同じ体温で話し合える相手というか。僕は、仕事をする上でそういう関係が大事かなと思うんです。友だちといっしょに仕事する最大のメリットは、そこですね。
——仲が良いからこそ、ビジネスライクではなく同じ熱量で取り組めるんですね。