「地球温暖化への具体的危険、認められず」神戸製鋼石炭火力発電所 稼働差し止め訴訟 住民ら敗訴、控訴へ 神戸地裁 | ラジトピ ラジオ関西トピックス

「地球温暖化への具体的危険、認められず」神戸製鋼石炭火力発電所 稼働差し止め訴訟 住民ら敗訴、控訴へ 神戸地裁

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判決後、原告敗訴を伝える弁護団ら<2023年3月20日午後 神戸地裁>

 日本のCO2排出量は世界で第5位とされる。原告弁護団は、石炭を燃焼して排出されるCO2(二酸化炭素)について、新設発電所から年間約692万トンと算出。日本で排出されている二酸化炭素の約4割が火力発電所から出され、特に石炭火力は天然ガスの2倍ものCO2を排出すると指摘している。
 神戸製鋼が増設した石炭火力発電所は、明らかにCO2の大量排出源であり、神戸市灘区の住宅地から約400メートルしか離れておらず、環境汚染物質の放出量が増え、健康被害により平穏に生活する権利が侵害されると主張していた。

 これに対して神戸製鋼側は、「自社でのCO2削減対策に取り組み、電力の販売先である関西電力もCO2対策に取り組むので全体として排出量は増加しない」と反論していた。
 そして、「地球温暖化は地球全体の問題であり、CO2は石炭火力発電所以外に、個人の日常生活で排出される。神戸製鋼の発電所からの排出と、原告らへの影響との因果関係はない。原告(住民)の主張を前提とすれば、誰に対してもCO2排出の差し止めを請求することができる」との考えを変えることなく、原告らに稼働中止を求める資格はないとしていた。

判決後、会見する原告代表と弁護団ら(神戸市中央区)

 原告弁護団はこの考え方について、「皆がこうむる被害は誰の被害でもないという抗弁」と反論している。皆の問題だから、個人の問題ではないという考え方について、「大海の一滴」のように扱われるのは、責任の所在をあいまいにするとして、ヨーロッパの複数の裁判所でこうした考えを排斥した例を挙げている。
 なかでも、オランダ・ハーグ地方裁判所が2021年、温室効果ガス排出させた結果、気候変動を悪化させた事業者の責任を認めた例を引き合いに、CO2の大量排出は、徐々に環境を悪化させるもので、気候変動のさらなる悪化をもたらし、住民の生命・健康を危険に陥れる「公害」であるとの認識が求められ、人権侵害であると主張していた。

原告代表・廣岡豊さん「控訴しかない」と怒り

 原告代表・廣岡豊さんは「『我が亡き後に洪水よ来たれ』という言葉を思い出した。この一言に尽きる。将来ある子どもたちのためにも、CO2の大量排出につながる発電所の稼働停止を決断してほしかった。このままだと1970年代の大気汚染時代に逆戻りするのではないか。あきらめず、今後も戦い続ける」と話し、控訴審に向けて意欲を示した。

 日本は、温暖化対策を進めるために世界の平均気温を抑える努力を追求する「パリ協定」を2016年に批准、2020年12月、菅義偉首相(当時)も「温室効果ガスを2050年までに実質ゼロにする」と宣言している。
 パリ協定は「世界の平均気温上昇を、18世紀後半から19世紀にかけて起きた産業革命以前(人為的な温暖化が起きる前)に比べて2度より十分低く保ち、努力目標として1.5度以下にする」全世界共通の国際的な取り組み。

 神戸製鋼の石炭火力発電所増設をめぐっては、環境影響評価(環境アセスメント)を適正とした経済産業大臣の確定通知は違法として、周辺住民らが国を相手に通知の取り消しを求めた行政訴訟も起こしたが、最高裁は10日、上告を棄却し、原告敗訴の二審・大阪高裁判決が確定した。

神戸製鋼所・本社(神戸市中央区)
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