旧優生保護法(1948~1996年)のもとで不妊手術を強制されたのは憲法違反だったとして、兵庫県内の聴覚障害者の夫婦2組と先天性脳性まひのある女性の計5人(このうち2人は提訴後に死去)が、国を相手取り計1億6500万円の損害賠償を求めた訴訟(兵庫訴訟)の控訴審で、大阪高裁は30日、 請求を退けた一審・神戸地裁判決を変更し、 国に対し計4950万円の賠償を命じた。
旧優生保護法をめぐる訴訟はこれまで神戸地裁をはじめ、全国の10地裁・支部に起こされた。一審では原告敗訴が相次いだが、控訴審では流れが変わり、昨年(2022年)以降、大阪・東京の各高裁で逆転勝訴、熊本・静岡各地裁の4件で勝訴し、国に対して賠償命令が出されている。一連の訴訟で国へ賠償命令が出されたのは7件目。
2021年8月の神戸地裁判決は、「旧優生保護法の立法目的は極めて非人道的であって、個人の尊重を基本原理とする憲法の理念に反することは明らかだ」と指摘した。さらに改廃を怠った国会議員の不作為を違法とする初の判断も示した。
そして、原告らの損害は強制不妊手術が行われた1960年代に発生し、精神的に著しい被害をもたらしており、損害賠償請求権を有していたとした。
その一方で「手術が行われた頃に訴訟提起が困難だったとしても、遅くとも1996年の法改正の時点では手術が不法行為に当たると認識できた」との見解を述べ、2018年~2019年の提訴までに(不法行為から20年が経過すると賠償請求権が消滅する)民法で定めた「除斥期間」が経過していたため、損害賠償請求権は消滅したと判断した。
兵庫訴訟の控訴審の争点は、「除斥期間」を適用するかどうかだった。
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■踏み込んだ大阪高裁の判断
大阪高裁は判決で、まず「旧優生保護法の違憲性」に触れた。
旧法は、特定の障害や疾患を有する者を不良とみなし、不妊手術により”子どもを産み育てるか否か”の意思決定の機会を奪うと指摘。立法目的は極めて非人道的で、個人の尊重を基本原理とする憲法の理念に反することは明らかで、幸福追求権を定める憲法第13条、法の下の平等を定める同14条に違反するとした。