旧優生保護法(1948~96年)の下で不妊手術を強いられたとして、聴覚障害者の夫婦ら兵庫県在住の5人(うち2人は死去)が国に損害賠償を求めた訴訟で、国は5日、計4950万円の賠償を命じた二審・大阪高裁判決を不服として、最高裁に上告した。
旧優生保護法をめぐる訴訟はこれまで神戸地裁をはじめ、全国の10地裁・支部に起こされた。一審では原告敗訴が相次いだが、控訴審では流れが変わり、昨年(2022年)以降、大阪・東京の各高裁で逆転勝訴、熊本・静岡各地裁の4件で勝訴し、国に賠償命令が出されている。一連の訴訟で国へ賠償命令が出されたのは7件目。
兵庫訴訟の争点は、2018年~2019年の提訴までに(不法行為から20年が経過すると賠償請求権が消滅する)民法で定めた「除斥期間」を適用するかどうかだった。
2021年8月の一審・神戸地裁判決は、この除斥期間を理由に原告の訴えを棄却した。ただ、「旧優生保護法の立法目的は極めて非人道的であって、個人の尊重を基本原理とする憲法の理念に反することは明らかだ」と指摘した。さらに改廃を怠った国会議員の不作為を違法とする初の判断も示した。
そして、2023年3月の大阪高裁判決は、
▼国が旧優生保護法を違憲と認める、または▼旧優生保護法を違憲とする司法判断が最高裁で確定する のいずれか早い時期から6か月は除斥期間が適用されないとする初めての解釈を示し、原告らの損害賠償請求権は消滅したとは言えないと一歩踏み込んだ判断で、被害者の救済範囲を広げた。