2017年頃から若者を中心に昭和時代の歌謡曲、ポップスの再評価が進んでいます。そんな現代の昭和歌謡・ポップスブームについて、シンガーソングライター・音楽評論家の中将タカノリと、シンガーソングライター・TikTokerの橋本菜津美がラジオ番組のなかで分析。また、ゴダイゴのミッキー吉野さんがオンラインで同番組の取材に応じ、過去と現代のメディアミックス事情を語りました。
(※ラジオ関西『中将タカノリ・橋本菜津美の昭和卍パラダイスSP』2023年5月30日放送回より)
【中将タカノリ(以下「中将」)】 近年、若者を中心に昭和歌謡曲、昭和ポップスが大きな注目を集めています。サブスク配信で40~50年前の楽曲が急浮上し、SNS上には「歌ってみた」、「踊ってみた」動画があふれています。2000年代にも徳永英明さんらが昭和の楽曲をカバーして話題になりましたが、今回のムーブメントは単なるリバイバルじゃなく、複層的に、さまざまな要因が絡みあって起こっていると感じています。
【橋本菜津美(以下「橋本」)】 そうですね、いろんなジャンルで昭和歌謡が注目されていると感じます。
【中将】 たとえばメディアミックス。先日、菜津美ちゃんから聞いた話ですが、原田知世さんバージョンの「木綿のハンカチーフ」(2016)がウェブコミック「純猥談」(原作:純猥談編集部、漫画:田川とまた)の「タバコの匂いがしない彼が好きだった。木綿のハンカチーフで泣く彼が好きだった。」の動画挿入歌に使われ、2022年5月の公開以来、YouTubeで約200万回、TikTokで約76万回の大反響になっています。
また、かつて週刊少年サンデーで連載された漫画「今日から俺は!!」が2018年、賀来賢人さん主演でドラマ化されましたが、その主題歌は嶋大輔さんの「男の勲章」(1982)のカバー。いま話題の「うる星やつら」新バージョンでも、旧バージョン主題歌「ラムのラブソング」(1981)が、ラム役の声優・上坂すみれさんにカバーされて劇中歌に使用されていますね。
【橋本】 (ドラマ版)『今日から俺は!!』(日本テレビ系)もリアルタイムで観ていましたが、主要キャストが注目度高い若手俳優ばかりで面白かったです。「男の勲章」も40年前の曲なんて気にせず聴いてましたね。
【中将】 実は昭和歌謡がカバーされた上でサブカルチャーとメディアミックスされる現象は少し前から起こっていました。僕がそれに気付いたのは13~14年前。アニメ「そらのおとしもの」のエンディングテーマに山本コウタローとウィークエンド「岬めぐり」(1974)のカバーが使われ、大量のパンティーが空を飛ぶアニメーションとともに話題になったんですね。
【橋本】 中将さんから聞いて動画を探しましたが、すごいインパクトでした(笑)。
【中将】 ここでリアル昭和時代に音楽とサブカルチャーのメディアミックスの先駆者となった方にお話を聞きたいと思っています。先日、Zoomでお話をうかがっています。ゴダイゴのミッキー吉野さんです。
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【中将】 ここ数年、若者の間で昭和時代のポップスが大流行していますが、ミッキーさんはこの現象は意識していましたか。
【ミッキー吉野(以下「ミッキー」)】 よく取材される方から入ってくるんですよ。林哲司が作曲した「真夜中のドア〜Stay With Me」(1979)が今すごく売れていて、本人も喜んでいるとか。そういうことを聞くとうれしくなっちゃうよね。ゴダイゴの曲も今またCMに使われたり、カバーされたりするってのは、やっぱりそういう現象があるからなんだろうなと思うから。友だちのアナログレコード屋さんからも、そういう評判を聞いてます。
【中将】ライブにも若い子はたくさん来ますか?
【ミッキー】 時々「こんな若い人がいるのか」っていうのはありますね。ホールじゃわかんないけど、ライブハウスだとすごくわかるよね。「親の付き合いか、おばあちゃんの付き合いかな」と思いきや、自分の意思で来ている若い人がいる。やっぱり非常にうれしいですね。