ウクライナ人・ポーランド人・ユダヤ人の3家族。ウクライナ女性が第二次世界大戦に翻弄されながら命がけで子どもたちを守り抜きます。映画『キャロル・オブ・ザ・ベル 家族の絆を奏でる詩』が全国公開中です。
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第二次世界大戦で実際にあった出来事に基づいた物語です。1939年1月、ポーランド領に3人で生活するユダヤ人家族と同じアパートに、ウクライナ人の3人家族とポーランド人の3人家族が引越しをする場面から始まります。それぞれ夫婦と幼い娘がいる3家族です。
ウクライナ家族の妻ソフィアは音楽の教師です。夫のミハイロは演奏家ですが、ウクライナ独立のために戦っていて足にけがをしました。このためソ連に支配されていたキーウに住むことができず、この土地へ転居することになったのです。
娘のヤロスラワは音楽家の両親の影響を受けて歌が得意です。公現祭イブの日に隣人たちを招待しようと、ポーランド家族の部屋へ行ってウクライナ民謡「シェドリック」=「キャロル・オブ・ザ・ベル」を歌います。ウクライナではこの曲を歌うと幸せが訪れると信じられてきました。歌を披露したあと、ヤロスラワが愛らしい表情で言いました。
「夕食会に来てください」
宗教の違うポーランド家族は戸惑いましたが、夕食会に参加します。3家族は互いに文化や習慣の違いを感じて少し距離をとって警戒しています。一方で娘たちはすぐに仲良くなります。次第に、親たちも他の家族を尊重するようになりました。
ポーランド家族の娘テレサは、ソフィアに歌を習いました。ピアノで伴奏したソフィアは、テレサの母ワンダに言います。
「あの子は上手になるわ。歌が大好きだもの」
1939年9月、第二次大戦が始まり、この地域がソ連に侵攻されます。その後、ナチス・ドイツに侵攻され再びソ連に占領されます。ポーランド家族の夫婦とユダヤ人家族の夫婦は迫害によって連れ去られ、娘たちだけが残されました。