ソフィアはユダヤ人の娘ディナとポーランド人の娘テレサそれに自分の娘ヤロスラワを守るため、彼女たちへ家の外に出ないよう命じます。
こうした中、戦況が悪化し、子どもたちを連行しようとソ連軍が家探しを始めます……。
「キャロル・オブ・ザ・ベル」はクリスマスの聖歌として映画『ホーム・アローン』(1990年)で歌われ、世界中に知られるようになりました。そもそもの発祥はウクライナ民謡「シェドリック」で、ウクライナ文化の証として今もウクライナ語で歌い継がれているそうです。今作は、同じ屋根の下で暮らすウクライナ・ポーランド・ユダヤの3家族が第2次大戦に巻き込まれながらも「キャロル・オブ・ザ・ベル」の歌に支えられる物語です。
ウクライナ家族の妻ソフィアは出身国が異なり血のつながりもない娘たちを、確かな信念を持って戦争の危険から守ろうとします。物語の後半には、自国民の命を狙うナチスの軍人家族の子どもが自宅へ迷い込んできますが、ソフィアは「この子に罪はない」と言って保護し、戦火から匿います。
ロシアによるウクライナ侵攻から500日が経過しました。ドキュメンタリー作品を中心に撮ってきた、キーウ在住のオレシャ・モルグネツ=イサイェンコ監督が今作を手がけています。監督によりますと、今作はすでにウクライナで公開され、大ヒットしているそうです。ウクライナ全土にある映画館のうち、およそ半分がオープンしていて、多くの映画館で満席に近いとのこと。ロシアによる侵攻が起こり、この映画を支持する人たちが増えているということで、監督は「このような状況下でもこの作品でカタルシスを覚えて満足している人たちが多いです」と語っています。
監督は現在、幼い子を育てる母親でもあり「実際の戦争において、女性や子どもは常に戦争の人質です。妊娠中だった私の姉と姪は、占領地の地下室で28日間過ごすことを余儀なくされました」と強調した上で、戦争の記憶を忘れず、ウクライナと世界の未来へ生かすことが重要だと説いています。
この映画はソフィアたちが暮らすアパートでの出来事を描きながら、現代で成功した女性歌手が当時を振り返る場面を挿入しています。観客の私たちはソフィアの信念が実るのを期待して、じっとスクリーンを見つめます。
映画『キャロル・オブ・ザ・ベル 家族の絆を奏でる詩』はいま、全国で公開されています。(SJ)
◇映画『キャロル・オブ・ザ・ベル 家族の絆を奏でる詩』(原題:Carol of the Bells)
※上映日程は、作品の公式サイト・劇場情報でご確認ください。
出演:
ヤナ・コロリョーヴァ アンドリー・モストレーンコ ヨアンナ・オポズダ ポリナ・グロモヴァ フルィスティーナ・オレヒヴナ・ウシーツカ
監督:オレシャ・モルグネツ=イサイェンコ
脚本:クセニア・ザスタフスカ
配給:彩プロ
(C)MINISTRY OF CULTURE AND INFORMATION POLICY OF UKRAINE, 2020 – STEWOPOL SP.Z.O.O., 2020