全国の学校に「エレキ禁止令」も? 60年代「若者を不良化させる」と言われたエレキ音楽の実態とは | ラジトピ ラジオ関西トピックス

全国の学校に「エレキ禁止令」も? 60年代「若者を不良化させる」と言われたエレキ音楽の実態とは

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【橋本】 事故が「グループサウンズは若者に悪影響」だという宣伝に利用されちゃったんでしょうか……。

【中将】 それ以前からコンサートに参加するために家出する若者がいて問題視されていましたが、余計に叩きやすい要素を作っちゃったんですね。でも、そもそも戦後から1960年代にかけては軽犯罪から凶悪犯罪に至るまで、少年非行が横行した時代でした。殺人事件なんて近年の10倍近くも発生していたくらいですから、エレキやグループサウンズの影響以前に社会全体がすさんでいたんですね。

【橋本】 えっ!? そんなにヤバい時代だったんですね……。

【中将】 少年非行とは少し違うけど学生運動も盛んで、それらを押さえつけるために文部省や教育委員会が次第に全国の学校で管理教育を徹底させていきました。それが部活動を強制したり、校則を強化したり、エレキなどの若者文化を否定したりということにつながっていくわけですね。

 だけど、これまでも紹介した通り、流行音楽と若者の不良化とは本質的になんの関係もありません。アーティストやミュージシャンに反権威、反社会的な人が多い傾向はあると思いますが、そのフォロワーまでがみんなそんなことってあり得ませんよね。

【橋本】 それはそうですよね。今は普通のサラリーマンの方やおじいちゃんでもロックファンはたくさんいらっしゃいますから。

【中将】 まともに考えればわかるはずなんですが、教育委員会や学校は浅い考えで、とりあえずそのとき、流行っていた音楽をやり玉にあげてしまったわけですね。そんな状況に怒ったのがエレキの第一人者だったギタリストの寺内タケシさんでした。「寺内タケシとバニーズ」名義でリリースされた「レッツ・ゴー『運命』」(1967)が代表的ですが、当時、模範的とされたクラシックや民謡のエレキバージョンを次々と発表します。

【橋本】 「レッツ・ゴー『運命』」めちゃくちゃロックですね! 理不尽なことへの怒りを音楽で表現するって素晴らしいと思います。

【中将】 寺内さんはその他にも1974年から全国の高校で出張コンサートをする「ハイスクールコンサート」など、社会にロック音楽の価値を訴える活動を始めました。寺内さんの活動が実ったのか、世代がひとめぐりしてみんなアホらしさに気が付いたのか、1980年代後半、昭和末期になるとエレキ禁止令は徐々に風化していきます。

【橋本】 ようやく若者が自由にロックに触れられる時代になったんですね。

【中将】 そうですね。でも……エレキ禁止令と聞いて「昔の人は……」と思った方も多いかもしれませんが、2010年代にもいくつかの学校の校内放送でボカロが禁止され話題になっています。時代は変わっても、つくづく日本の学校教育って進歩がないんだなと思わされます。

【橋本】 私が高校生くらいの時期にそんなことがあったんですね! たしかに当時のボカロは最近と違って過激な曲も多かったですから。「よっこらせっくす」とか(笑)。

【中将】 ありましたね(笑)。でも仮に禁止するにしても曲の内容を基準にするべきで、安易にボカロ全体を禁止しちゃうのはダメですよね。思考停止するんじゃなくて、なぜ下ネタ曲を校内放送でかけるべきではないかを考えさせるような教育が全国の学校でおこなわれて欲しいです。

(※ラジオ関西『中将タカノリ・橋本菜津美の昭和卍パラダイス』2023年8月4日放送回より)

ラジオ関西「中将タカノリ・橋本菜津美の昭和卍パラダイス」収録風景

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中将タカノリ・橋本菜津美の昭和卍パラダイス | ラジオ関西 | 2023/08/04/金 20:30-21:00

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