作り手が原材料のカカオ豆からチョコレートになるまでの全加工を一貫して手掛けるクラフトチョコレートは、日本でも専門店が増えるなど注目を集めている。
そのおいしさに魅了され、全国的にも珍しい国産カカオ豆の生産に取り組むのが宮崎県宮崎市にある「宮崎カカオ農園」の代表・大田原尊之さんだ。
「高品質なカカオ豆と砂糖、たった2つの原材料で作られたクラフトチョコレートは、カカオ豆の産地や品種によって味やフレーバーが全く異なります。初めて食べた時、その味のバリエーションや奥深さに感動しました」と大田原さん。ベリーのようにフルーティーだったり、涼やかな木の香りだったりと、多彩な味わいを生み出すカカオ豆に興味を持ち、3年前から自宅でカカオ豆の試験栽培を始めた。
国内でカカオ豆を生産している事例は数少なく、手掛かりになるのは海外の文献のみ。平日は宮崎県職員として働きつつ、休日はカカオ栽培の研究に没頭した。試行錯誤しながら受粉率の低さや果実の成長不良率の高さといった課題を一つひとつクリアしていき、ようやく納得のいく収穫量を得るまでにこぎ着ける。そして今年春、宮崎県庁を退職し、7月に「宮崎カカオ」を生産する「宮崎カカオ農園」を立ち上げた。
ビニールハウスで行うカカオ栽培で重要なのが温度管理だ。温暖な気候で知られる宮崎だが、冬には農業用暖房施設が欠かせない。そこで、8月からはクラウドファンディングに挑戦し、集まった資金を暖房機の購入に充てたいと考えている。
導入を予定しているのは地元・宮崎産の木材を資源とする「バイオマス資源活用暖房機」。大田原さんは「重油等を使用する暖房施設に比べて環境への負荷が小さく、また地元の林業活性化に貢献したいという思いから選択しました」と話す。