◆『羽川英樹の出発進行!』
無類のうどん好きの筆者は、うどん県・香川の本場「さぬきうどん」をはじめ、タフなコシのある名古屋の「味噌煮込みうどん」、逆に見た目とちがってやわらかく、たまり醤油のつゆが絶妙な「伊勢うどん」、ホルモンを低温で揚げた油かすがにくい大阪の「かすうどん」、最近とみに注目を集めごぼう天との相性も抜群の「博多うどん」など、各地のうどんを食べ歩いてきました。
また変わった形状では、京都・北野天満宮近く『たわらや』の長さ1.5メートルのうどんが1本だけ入った「1本うどん」や、奈良市の『麺闘庵』のだしの中に大きな油揚げだけが浮かび、その中にうどんが入っているという「巾着うどん」などにも出会ってきました。
しかし、今回取り上げる群馬のご当地うどんは、関西在住の私にはまさに驚きのご“対麺(面)”だったのです。
その店は中央競馬のトレセンがあることでも有名な滋賀県の栗東市にありました。大型トラックがひっきりなしに行きかう国道1号沿いにある『開運うどん 川また』。ここは関西では非常に珍しい群馬・桐生の郷土料理「ひもかわうどん」の専門店なんです。
ここのうどんは国内最大級の平麺と言われ、なんと1本というか1枚というかわかりませんが……幅が8センチもあるんです。厚さは1ミリほどの超幅広麺で、まさに帯ともカーテンともいえそうな麺の形状にまず驚きます。これが上質の絹織物のように丁寧にたたまれて、200グラムというボリュームもたっぷりで盛り付けられてきます。見た目が実につややかで美しく、その姿はまるで究極のインスタ映えする「つけ麺」と言えそうです。(税込み1000円)
ただし、この麺、皆がどこからどう食べようかと悩んでいます……。特にマニュアルはないようですが、周りを見回して真ん中の4センチくらいのところに箸を入れてすくいあげるのが良策と判断しました。平麺といえば「きしめん」が代表格ですが、その平均はせいぜい8ミリくらい。つまり、ここの「ひもかわうどん」は通常のきしめんの10倍の幅があるということになり、ゆっくりゆでるため注文してから提供されるまで少し時間がかかります。
ほどよいコシと、つるんとしたのどごし、そして見た目の美しさが客をとりこにします。そして麺もさることながら、ここのつけ汁がうまいんです! 醤油ベースの秘伝のアツアツの汁の中には豚肉・油揚げ・太いネギがどーんと浮かんでいます。ダシなどの配合は企業秘密とのことですが、店主夫婦でかなりの試行錯誤の上に完成したらしく、冷たい超幅広平麺にアツアツのつけ汁が実にいいコンビネーションを醸し出しています。