和食が日本の文化として無形文化遺産に登録されてからはや10年以上。ですが「白ご飯に焼き魚とみそ汁」などといった家庭や定食屋で提供されるシンプルなものはさておき、本格的な和食ともなると日本に住んでいながらもあまり触れる機会がなく調理法の名や意味・作法などわからないことがいまだに多々ある筆者。中でも「割烹」と「懐石」は似たようなイメージがあり、何が違うのか全くわかりません。そこで、江戸時代の食文化に詳しい車浮代さんに話を聞きました。
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【割烹 言葉の意味と由来】
浮代さんによると「割」には包丁で食材を割く、「烹」には焼く・煮るという意味があり、もともとは調理法として使われていた、四文字熟語の「割主烹従（かしゅほうじゅう）」が言葉の由来だとか。
「包丁を使って切る『刺身』などが一番で、次に火を使って煮たり焼いたりする『烹』が、これに続くという意味です。日本料理の基本は、刺身を第一に考え、他のメニューは刺身に合わせて考えます」と浮代さん。
【割烹料理の特徴】
浮代さんいわく「カウンター席やテーブル席で本格的な日本料理を食べられるお店を『割烹』と呼びます。したがって、『割烹料理』とは割烹で提供される料理のことを指します」とのこと。板前が直接客に料理を提供する形式で、1人でも気軽に利用しやすく好きな料理を1品ずつ自由に注文できるスタイル。また、目の前で調理する様子を見ることができるという点も割烹の魅力だといいます。
【懐石 言葉の意味と由来】
「禅宗の修行僧が人肌程度に温めた石を懐に入れ、お腹の上にあて空腹や寒さをしのいだ行為が発端」と浮代さん。そこから、同様の効果があるとして茶事で出される料理が「懐石料理」と呼ばれるようになったとか。
時は進み、安土桃山時代になると千利休が茶の湯を完成させたことにより「茶懐石」なるものが誕生したとされています。これは“茶の席”において、茶の前に口にする軽い食事を指し、お腹いっぱい食べるものではなく茶をおいしく楽しむために出されていた.....と浮代さんは話します。
【懐石料理の特徴】
浮代さんが言うには、“一汁三菜”が最初に出されることが最大の特徴だそう。「一汁三菜とは主食であるご飯とお汁、肉や魚を使った主菜、野菜や海藻などを使った2種類の副菜で構成されています。季節を感じられる旬の食材を活かすものなどが出され、客人をもてなす意味も込められています」と説明。
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日本人が本格的な和食に触れる機会が少なくなった現代。取材の最後に浮代さんは、「和食は素材はもとより、調理の技術が詰まった素晴らしい料理です。日本人の誇りや文化を是非とも積極的に感じて欲しいと思います」としめくくりました。
（取材・文＝宮田智也）
◆車浮代さんの著書
『大河ドラマの世界を楽しむ！ 江戸レシピ＆短編小説 居酒屋 蔦重』（オレンジページ）
蔦重が生きた江戸時代の情報が満載
