飲食店ではもちろん、家庭料理としても親しまれている「エビチリ」。実は中国発祥のものではないのだとか。 詳しい話を、チャイニーズドットコム中国語教室の担当者に教えてもらいました。

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担当者によると、我々日本人がエビチリと言っているものは中国出身の料理人・陳建民氏が「日本人の口に合わせて日本で考案した料理」で、四川料理の乾焼蝦仁(カンシャオシャーレン)というエビの辛味炒めが原型とされているのだそう。
「乾焼蝦仁の辛さをおさえ、豆板醤のかわりにケチャップや卵黄などを使いまろやかな味わいに仕上げたものが日本で『エビチリ』として浸透したのです」と担当者は説明。原型とは言うものの乾焼蝦仁とエビチリは全くの別物だそうで、「中国の一般的なレストランでエビチリを注文しても、まず通じません」とのこと。
さて、担当者いわく「中華料理」と「中国料理」は同じものではないとか。「中華料理とは一般的に日本国内で日本人の味覚・食文化に合わせアレンジされた、あるいは日本で独自に考案された料理を指すことが多いです」(担当者)
・中国各地の料理をベースに日本の食材や調味料を使う
・油の使用量を控えめにする
・甘みやとろみを加える
……などといった「日本人好みのローカライズ」がなされているのが中華料理と言えそうです。
いっぽう中国料理とは、「中国本土で食べられている料理」「伝統的な調理法によって作られる料理全般」を指すとのこと。国土面積が超広大な中国では、地域によって歴史・風土・気候・産物が大きく異なるため、料理にもそれらが影響し個性があらわれるのです。
【北京料理】北方の料理。宮廷料理の流れを汲み、小麦粉を使った料理(餃子・麺・饅頭など)が多く見られる。炒め物や燻製なども特徴。北京ダックは北京料理の代表格。
【上海料理】東方の料理。長江河口の豊かな食材を活かした魚介類や野菜を使う。甘辛い味付けが特徴で、煮込み料理や蒸し料理が多い。小籠包・東坡肉(トンポーロー)・上海蟹など。
【広東料理】南方の料理。新鮮な食材の持ち味を活かした、比較的薄味で洗練された料理が多い。飲茶・海鮮料理・フカヒレスープ・酢豚など。
【四川料理】西方の料理。唐辛子の辛さ「辣(ラー)」と花椒(ホアジャオ)の痺れるような辛さ「麻(マー)」を特徴とする、刺激的で複雑な味わい。麻婆豆腐・回鍋肉・担々麺・火鍋など。
上記は世界的にも知られる「中国四大料理」と言われるもの。このほかにも、湖南料理・福建料理・山東料理・江蘇料理などが存在します。

これらの中国料理は、なぜ日本で異なる進化を遂げたのでしょうか。
「中華料理の誕生には、『日本中華の父』とも言える料理人たちの存在が大きいです。エビチリのほかに麻婆豆腐や回鍋肉を日本人好みに改良した陳建民氏、広東省出身の父を持ち横浜中華街で修行を積んだ周富徳氏をはじめとした中国人料理人たちが、日本で工夫を凝らしたことが今の中華料理に繋がっているのです」(担当者)
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本場中国の料理を日本人にむけてアレンジした中華料理はエビチリ以外にも存在するようです。独自に調べてみるとおもしろい発見があるかもしれません。
(取材・文=つちだ四郎)

【取材協力】チャイニーズドットコム中国語教室/語学教育のドットコムビジネス
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