県や町の特産品・素材を“とことんまで”使う、地域をいかしたスイーツが兵庫県揖保郡太子町にあると聞きつけた筆者。一体どのようなものなのか取材しました。
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そのスイーツとは「いちじくのガトーショコラ」。その名の通り太子町産のいちじくがたっぷり。しかしながら大きな特徴があって、果実だけでなく「葉っぱ」まで使っているのです。通常なら捨てられてしまう葉も“香りづけ”として役立てているのだそうで、SDGsを意識していることがうかがえます。

この菓子を手がけるのは地元のイタリアンレストラン「PAPA’S&MAMA’S」(兵庫県揖保郡太子町)。「もったいない」を生かす工夫ではありますが、店長の森田兵蔵さんによるとなかなかの手間がかかっているとか。
というのも、いちじくの葉は農家まで回収しに行き、店で乾燥・加工して茶葉に仕立てているのです。既製品ではなく手作り茶葉にこだわる理由については「健康に良い成分が含まれており、葉を活用することは農家さんにもお客さんにもメリットがある」と説明。丹念に仕上げたいちじく茶葉をガトーショコラに練り込むと、香ばしさがケーキに加わり深みがグンと増すそうです。
もうひとつ、町の新しい“手土産”として親しまれているのが「山椒のガトーショコラ」。こちらには、太子町の特産である「山椒」と姫路市安富町の老舗酒蔵で造られた地酒「奥播磨」が使われています。和食の印象が強い山椒ですが、フランスではチョコレートに合わせることも。「欧米では、積極的に和の食材を取り入れようとする動きもあると聞きます。そうした背景もあり『山椒×ガトーショコラ』という組み合わせにたどり着きました」と兵蔵さん。
開発のきっかけは、コロナ禍に届いた町や農家からの声。「地元の特産を使った商品を作れないか」という要望があったのだとか。閉塞的な雰囲気が漂う時期に「地域の人たちが少しでも明るい気持ちになれるように」と試作を重ねて完成に至ったそう。

ちなみに、兵蔵さんの店で活躍するピザ窯に使っている薪は姫路産。料理に適した太さや長さを指定して仕入れているとのこと。同店でマネージャーを務める妹の智子さんによると、1997年の改装時に導入されて以来、すべて薪で火を起こし仕込みから温度管理までを手作業で行っているそうです。

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材料から熱源まで。太子町のみならず、このように「食を通じた地元資源の循環」に取り組む地域はまだまだ他にもありそうです。
(取材・文=洲崎春花)
※ラジオ関西「谷五郎の笑って暮らそう」2025年11月9日放送分より





