産地や銘柄など、種類が豊富な日本酒。飲み方を聞かれたときに、筆者がとっさに思い浮かべたのは「冷や」「燗」でしたが、じつは温度によって様々なバリエーションがあるのだとか。沢の鶴株式会社(神戸市灘区)の今野浩之さんに話を聞きました。

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今野さんによると30℃から60℃まで、5℃ごとに燗の表現が変わるそう。
●燗の温度とそれぞれの表現
【30℃】日向燗(ひなたかん)
【35℃】人肌燗(ひとはだかん)
【40℃】ぬる燗(ぬるかん)
【45℃】上燗(じょうかん)
【50℃】熱燗(あつかん)
【55℃~60℃】飛びきり燗(とびきりかん)
燗酒はすぐに体が温まり満足感が得られるため、飲み過ぎ防止効果が期待できるといいます。よく耳にするのはぬる燗・熱燗ですが、前者は「酒の香りが最大限になりふくらみのある味わい」、後者は「シャープな香りと切れのよい味わい」なのだとか。また、今野さんは「飲む人の好みや酒の種類に応じ、適度に温めて提供するという一手間は、日本の『おもてなしの心』とも言えます」と付け加えました。

●冷やの温度とそれぞれの表現
【5℃】雪冷え(ゆきびえ)
【10℃】花冷え(はなびえ)
【15℃】涼冷え(すずびえ)

甘み・旨味・酸味・塩味・苦味など、様々な味わいが複雑に絡み合う日本酒。それぞれ温度によって感じ方が変わります。下記に1例を挙げました。
【甘み】温度が低いとあまり感じない。
【苦み】低い温度だと感じやすい。
【酸味】温度による感じ方の変化は少ない。
同じ日本酒でも温度によって味わいが異なるため、違いを楽しめるのが魅力のひとつと言えるかしれません。その上で、おすすめの飲み方も教えてもらいました。
「春の少し肌寒い時はほんのり温めたお酒、暖かい時は冷やした吟醸酒や大吟醸酒はいかがでしょうか? 夏は原酒のロックや炭酸割、キンキンに冷やした生酒や15℃ぐらいの吟醸酒もおいしいです。燗ロックもおもしろいですね。秋は常温や体温で温めながらひやおろしや熟成酒をゆっくり愉しむ。冬はナベをつつきながら、純米酒などコクのあるタイプのお酒の熱燗や部屋の中を温かくして軽快で滑らかなタイプの冷たいお酒も良いですよ」(今野さん)
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ちなみに、日向燗・人肌燗など燗酒の名称は昔からあったそうですが、「燗の温度」と「冷やの表現と温度」は同社独自で決めたものだそうです。
(取材・文=迫田ヒロミ)
※ラジオ関西『Clip』2026年3月11日放送回より




