鉄鋼大手「神戸製鋼所」の子会社が神戸市灘区で建設計画中の石炭火力発電所2基について、環境影響評価(アセスメント)手続きに瑕疵(かし=不十分なこと)があるにもかかわらず、変更の必要がないとした経済産業省の確定通知は違法として、周辺住民ら12人が国を相手取り、通知の取り消しなどを求めた訴訟で、請求を棄却した一審・大阪地裁の判決を不服として、原告の住民らが控訴したことが26日、関係者への取材でわかった。
温室効果ガスの排出が多く、世界的に廃止される流れが強まっている石炭火力発電所の環境アセスメントに対する国の判断の是非が争われたのは初めてだった。
住民側は、経産省には温暖化対策の枠組み「パリ協定」に基づく削減目標を達成する義務があるとして、義務に沿ったCO2の排出規制を省令で定めていないことは違法だと主張していた。しかし大阪地裁は3月15日の判決で「経産相の判断に裁量権の逸脱、乱用はなかった」として訴えを退けた。
原告の弁護団は「控訴審でも石炭火力発電所による大気汚染・地球温暖化による被害の甚大さ、そして環境アセスメントで被害を防止すべく適切かつ厳格な審査・判断を経産相が怠ったことについて改めて主張し、一審判決の判断の誤りを追及する」とコメントした。
住民らは2基の建設と稼働の差し止めを求める訴訟も神戸地裁に起こしており、係争中。次回の口頭弁論は4月27日に予定されている。